2012年5月18日(金)

ウチの本棚
[不定期リレー・コラム]第3回:星 健一の本棚

 このお題を頂いてから、実は困っている。これまで、このエッセイを書いている人達と同様、私の部屋にも本棚が無い。いや、正確に言うと、一つある。秋田文庫の手塚治虫シリーズがほぼ全巻入っている文庫用本棚があるだけだ。その他の本は、箪笥の上とレコード

棚の前に置いているだけである。そこに入らない本は押し入れだ。というのも、レコード棚が部屋の大部分を占めているため、本に割くスペースはほぼ無いに等しく、ましてや本棚を置く場所など毛頭ない。それ故、この「私の本棚」を語る資格など本当は無いのであろ

うが、棚の様なところにどんな本が置いてあるか、という内容で勘弁して頂きたい。
 以前、「週刊てりとりぃ」で、ほとんど文庫本しか買ってない、という事を書いたが、現在でも、それは変わらず続いている。利便性と収納性の2点で文庫ばかり買ってしまうのだが、それでも、結構買う数が多いため、後で収納に困ることになる。まったく本末転倒で話にならない。
 我が家に所蔵されていく本のタイプは圧倒的に、エッセイ、ノンフィクション、解説本の類いが多い。小説は読んだらほとんど売ってしまう事が多いため、結局、それ以外の本が残る事になる。人によっては小説を繰り返し読むという人もいるだろうが、個人的にはほとんど、そんな事は無い。但し、例外はある。池波正太

郎と山口瞳の諸作に関しては、全巻読破と所蔵を密かな目標にしているため、読了した小説も持っている。それらの多くが入っているのが押し入れであり、改めて探すのが非常に困難な状況になっている。
 そんな中で、現在、所蔵している本のジャンルで多いのが、音楽に関する本だ。趣味と実益を兼ねているという事もあるが、特に文庫を見つけると、つい買ってしまうのである。特に、ロック、ジャズ、フォークな

どのジャンルはとりあえず、買ってみる。但し、読んでつまらなかったら、惜しげもなく売る。しかし、最近は古書ではあるが、シンコーミュージック文庫にハマっており、全巻読破、及び所蔵を目論んでいるので、面白く無かった本も置いてある。ビートルズ、ストーンズ等メジャーなアーティストの多い中、鳥井賀句、油井正一、田川律、早川義夫の諸作もあり、中々侮れないシリーズでもある。
 将来的には、このタイトルの様な「本棚」を持ちたいものである。そうすれば、所蔵している本が一望でき、最近頓に多い、同じ本を二度買う事も無くなると思うのだが。
 まあ、その前に、レコードを整理して減らして、本棚を置くスペースを確保するのが先決だろう。
(星 健一=会社員)



ロック重箱の隅 「コーエンとスペクター」


レナード・コーエン『ある女たらしの死』
Leonard Cohen / Death of a Ladies' Man
(Columbia / 1977) Produced by Phil Spector
 フィル・スペクターがプロデュースしたレナード・コーエンのアルバム「ある女たらしの死」。仮歌を録った段階でレナード・コーエン本人をシャットアウトして(!)、スペクターが勝手にアレンジ、トラックダウンして完成させたといういわくつきのアルバム。ま、スペクターがプロデュースしたアルバムは殆どいわくつきなんだけどね。激

怒したコーエンはその後の自ら選曲した2枚組ベストにもこのアルバムからは1曲も選曲していない。他はほぼ満遍なく全てのアルバムからセレクトしているのに。まるでスペクターに1円の印税も渡したくないといった感じで(このアルバムは全曲スペクターとコーエンの共作)、ほとんど仕返し状態。
 確かにこのウォールオブ

サウンド丸出しの音は彼のディスコグラフィーの中で明らかに浮いている。ボーカルは誰がやってもいいような音になってて、後から勝手にかぶせたと思しき女性コーラスとコーエンの歌のタイミングはズレまくり。これはラフミックスか? そして、このアルバムの主役はスペクターだと言わんばかりの、誰が聴いても分かるスペクター印の音が全編にわたって展開されている。この音には、コーエンだけでなく、コーエンの熱心なファンも激怒して当然だろう。
 だけどね、このアルバム、とってもいいの(笑)。特に「IODINE」て曲、すごいいいの。ロマンチックを絵に描いたような曲。たまらん。主役を締め出して勝手放題やる「人としておかしい人間」が作る音楽が、とてもいいという。こ

れだから音楽は理屈じゃ説明できないよねー。
 ところで、良い子のみんなはウィキペディアのフィル・スペクターの写真を見たかな? もし見てなかったら、見ないままで済ませた方がいいよ。夜トイレに行けなくなります。絶対、絶対見たらダメだぞ!
(五條弾=会社員)
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レナード・コーエン「IODINE(邦題:ヨードチンキ)」作詞レナード・コーエン/作曲フィル・スペクター
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てりとりぃアーカイヴ(初出:月刊てりとりぃ#17 平成23年7月23日号)
21世紀のなかの昭和

 来ましたね、来ましたね、放っておいても何をしていても物凄く暑い季節。モワーンとまとわりつく熱風。「もう、分かったって!」と誰に言うでもなく、僅かながらの苛立ですら暑さを感じる季節。笑いましょう、もうこうなったら。それしか術がありません…。
 ラッキーな事に私の仕事はスーツを着る必要がないので、ペランペランのワンピースで抜かり無く隙間を作り、少しでも暑さから免れようと思います(が、身体が出る部分が多いと蚊に刺されるという欠点も)。
 そんなペランペランファッションの私、最近は近所の商店街でお買い物をするのがマイブーム。
 商店街と言っても物凄く小さい。八百屋さん、お肉屋さん、魚屋さん、お花屋さんにクリーニング屋さん本屋さんに酒屋さんで終わ

る。非常にタイトな商店街なのだけど、そこの漂う雰囲気がとても良い。サザエさんがお買い物に来たって不思議じゃない空気。テクテクとまずは八百屋さんで欲しい野菜、もしくは今日安い野菜を吟味する。すると通りがかった学校帰りの小学生ちゃんが元気に「こんにちわー!」と店のおじさんに声を掛ける。「ほーい、気をつけてねー!」と嬉しそうなおじさん。ドラマの1シーンのよう。次は野菜を片手にお肉屋さんで挽き肉なんぞを。ただこのお店はなんだか汚い(ごめんなさい)。明るい店内は目指さず、お安い提供を目指してる感。それでもお肉は美味しいので買う。次はお花屋さんに顔を出すと「毎度どうも〜」と心地よいお声を掛けて下さる。一回買っただけでお顔を覚えて下さるなんて、できた店

としか言いようがない。なので「毎度」何かしらの素敵なお花を選ぶ事にする。そうして最後に酒屋さん。ここの若女将は私を「お姉さん」と呼んでくれるのが嬉しい。そして「ありがとうございなーす!」とご挨拶してくれる。え?ありがとうございなーす?そう、確実に「なーす!」と言うのである。全体的に鼻声とかそうではなく、最後の「ありがとうございます!」だけが「ございなす!」なのだ。なぞったらありゃしない。だけどこっちの耳はその言葉を期待するようになってしまったからまた行くしかないのでございなす。東京のど真ん中にある平和商店街。ペランペラン服でも許されるナイス商店街、あなたの街にはありますか?
(加藤紀子=タレント)








宇野亜喜良個展
白い祭 La Fete Blanche


2012年5月22日(火)~6月2日(土)
11:00〜19:00(最終日は17:00まで)日曜休廊
スパンアートギャラリー


好評発売中!!
手塚治虫『三つ目がとおる』1、2巻

発行:小学館クリエイティブ 発売:小学館 定価:各1,500円(税込)

▼先史時代に偉大な文明を築いた三つ目族の子孫で不思議な力を持つ少年・写楽保介が、古代史にまつわる難事件に立ち向かう、ミステリータッチのSFで著者の代表作のひとつが、雑誌発表順に、掲載時の扉、カラーページも初めて再現した決定版で蘇る。
▼中学2年生の写楽保介は、いつも額に大きなバンソウコウを貼っているときは、まるで幼い子どものように純真だが、ひとたびバンソウコウがはがれると、その下から第三の目があらわれて、たちまち、恐ろしい超能力を発揮する悪魔のような三つ目人になる。クラスメートの男まさりな女の子・和登千代子とともに、古代遺跡や財宝にからむ謎に次々と巻きこまれていく。
▼全10巻。毎月2巻ずつ刊行。全巻予約購読者には著者サイン入り万年筆プレゼント。
問合せ:小学館クリエイティブ(担当:山田)03-3288-1354 http://www.shogakukan-cr.co.jp/news/n4121.html