てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年8月17日〜2012年8月31日分)

 ジャンゴ・ラインハルトやグレン・グールド、ジャック・タチといった人物までが実名で登場するという2002年のアニメ映画「The Triplets of Belleville」を見て結成を思いついた、というプッピーニ・シスターズ。結成は04年で、06年デビュー、これまでアルバムを4枚発表していますが、実力がどうとか、アレンジがどうという以前の話として、(例えば昨今話題のピンク・マルティーニのように)そのスタイルが楽しくて仕方ない、という陽気な魅力に溢れたコーラス・グループです。デキシー/スウィングのジャズ・ヴォーカリーズ・スタイルがこういった形で今の時代にプレゼンされる、というのも楽しいですよね。(2012年8月17日更新分/選・文=大久)


The Puppini Sisters / Heart Of Glass (2006)

 イギリスでゴールド・ディスクに輝いたデビュー・アルバム「BETCHA BOTTOM DOLLAR」収録曲。もちろん、ブロンディー「HEART OF GLASS」のカヴァーです。シスターズを名乗っていますが実際の姉妹ではなく、メンバーはマルセラ・プッピーニ、ステファニー・オブライエン、ケイト・マリンズの3人。面白いのは、3人とも「年齢非公表」だということです(笑)。

The Puppini Sisters / Wuthering Heights (2006)

 同じくデビュー盤に収録された曲で、78年のケイト・ブッシュ「嵐が丘」のカヴァーです。元曲はもちろん日本で「恋のから騒ぎ」のOPテーマ曲として知られる曲ですが、イギリスではKB嬢のデビュー曲として特別扱いされる有名曲。プッピーニ・シスターズの代表曲としても、ステージでも数多く披露されている曲です。


The Puppini Sisters / Mr. Sandman (2007)

 動画はドイツのTV番組に出演した際のライヴ映像です。なんていうか、イギリスっぽい「肉厚で、垢抜けない」カンジがたまりません(笑)。こちらはもちろん1954年コーデッツによって大ヒットした曲のカヴァー。女性コーラスの見本のような曲でもありますが、チョロっとでてくるバイヴが気持ちいいですね。セカンド・アルバム「THE RISE AND FALL OF RUBY WOO」収録曲ですが、同作には「スウィングしなけりゃ意味ないね」等も収録。

The Puppini Sisters / Moon River (Secret Sessions/ 2011)

 最後は2011年に発表されたハリウッド・スタンダードのカヴァー集『HOLLYWOOD』から「MOON RIVER」のカヴァーです。が、こちらの動画は彼女達自身の演奏によるスペシャル・バージョン。これまでもプッピーニ・シスターズは彼女達の「元祖」といえそうなアンドリュー・シスターズ「BOOGIE WOOGIE BUGLE BOY」、グロリア・ゲイナーのディスコ・ヒット「I WILL SURVIVE」、クラシックス・フォー「SPOOKY」他に加え、ジャズ/R&B等のスタンダード・カヴァーも沢山残しています。公式HPはこちら。たくさん試聴もできます。



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 トニー・バジル。1943年生まれということなので、もうすぐ70歳になろうかという方ですが、実は最近でもバリバリ番組制作に参加されている現役のダンサー&振り付け師。ストーンズやデヴィッド・ボウイとの共演もある人なので、ロック・ファンにもその名は知られてるかも知れません。また映画「アメリカン・グラフィティ」や「(ベット・ミドラーの)ローズ」でも振り付けを担当した彼女。今でも昔と変わらぬ美貌をキープ(!)されてる方ですが、今回はそのトニー・バジルの有名なキャリア/お仕事を並べてみました。(2012年8月24日更新分/選・文=大久)


Toni Basil / Breakaway (1966)

 当時すでに「SHINDIG」(アメリカの音楽バラエティー番組)の振り付け師をやっていたトニー・バジルですが、66年に歌手デビューした際のシングル曲です。ノーザン・ソウルの名曲としても有名ですが、有名になったのは80年代以降の話です。白人女性が歌い、A&Mというレーベルから発売された曲ですが、それでも「ノーザン・ソウル」なんですよね。

Toni Basil / I'm 28 (1966)

  上記「BREAKAWAY」のシングルB面曲で、こちらはブリティッシュ・ビート/ポップスで数多くのヒット曲を提供し、後には10CCのメンバーとしても有名になったグラハム・グールドマンの曲。この66年のシングル曲はヒットしませんでしたが、既に芸能界のセレブリティーとなっていた彼女は、この後数多くのメジャーな仕事を担うようになります。

Toni Basil on Easy Rider (1969)

アメリカン・ニュー・シネマ名作中の名作「イージーライダー」ですが、映画後半でちょっと印象的な女性が2人登場しますよね。ブルネットヘアのオープンな女性は後にゴールデングローブ賞やグラミーも獲得した名女優カレン・ブラック。そして(ピーター・フォンダのお相手をしてる)黒髪のモノ憂げな女性はトニー・バジル、でした。動画は同映画中最もサイケデリックでいかがわしいパートですが、同作のファンであれば、このクリクリ眼の女性の演技に惹かれた方も多いのではないでしょうか。

Toni Basil / Mickey (1982)

 人生なにが起こるかわかったモノではありません。「BREAKAWAY」から16年後、そして「イージーライダー」から数える事13年後、彼女は再び歌手活動を始めます。そして82年発表の、このチアリーダー・ソング「MICKEY」はなんと200万枚を売り上げる全米NO.1ヒットとなってしまいました。今であれば、もちろん「ゴリエ」のテーマ曲として有名なこの曲ですが、2012年のマドンナ「GIVE ME ALL YOUR LOVIN'」の下敷きになった曲であることも間違いありません。

David Bowie - Time Will Crawl (1987)

 最後はオマケ動画。トニー・バジルは1974年の「DIAMOND DOG TOUR」の振り付けを担当して以来デヴィッド・ボウイと親しい間柄ですが、87年のツアーでも振り付けを担当しました。動画は同年のシングル曲(ギターでピーター・フランプトンが参加)のPVですが、ここでもトニー・バジルが振り付け&出演しています。が、この時期のボウイのPVはロクなモンであったためしがなく、ボウイ本人も「ホントは別なバレエ団(=ラララ・ヒューマン・ステップス)を使いたかった」などと酷いことを言っています(笑)。

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 今年の3月に東京であったライヴ(当方は不参加でした。チケットが取れなかったんです…)がこの夏DVD+CDの7枚組BOXセットで発売(写真右)されます。ジャケがまた70年代ニュー・ウェイヴっぽいカンジで素敵ですが、最近初音ミクはなんだかスゴいことになってますよね。そんなワケで初音ミク特集・第2弾。ボカロPの中でも異色の「奇才」cosMo@暴走Pさんの神曲、「初音ミクの消失」と「初音ミクの激唱」をご紹介です。(2012年8月31日更新分:選・文=大久)


cosMo@暴走P/初音ミクの消失 -DEAD END-

初音ミクは「性格」を持っていません。ユーザー(動画中では「マスター」と呼ばれます)によって命を吹き込まれ、初めて利用価値のあるソフトウェアです。その点が「アニメキャラ」と根本的に違います。そして、この動画に盛り込まれた「ミク」という人格も、制作者(cosMo)が与えたものでもありません。半年ほどの間に名も無き数万人のユーザーによってコツコツと積み上げられてきた小さな砂が象った巨大なピラミッド、その頂にいる神(カミサマ)のようなもの、とも言えます。その神がなんと「自己矛盾」を歌うというこの曲(別名“最高速の別れの歌”)は、「最もカラオケ難易度の高い曲」としても有名です。(2008年4月8日発表)

cosMo@暴走P/初音ミクの激唱 - Infinity Happy End...///

「消失」はあきらかに悲劇的です。その悲劇からの救済のために用意された、と思われる続編が、「消失」から2年後に発表されたこちらの「激唱」(別名“最高速の喜びの歌”)。ご覧のように動画のクオリティーは既に商業作品のそれを凌駕するものですが、この感動的な動画が生まれた意味は「我歌う、故に我有り」しかありません。この動画がアマチュア制作である証拠(スペルミス)も作品中に残されてますが、そのことが余計に当方の胸を熱くさせるワケです。(2010年7月9日発表)

cosMo@暴走P/0→∞への跳動

「消失」の衝撃から4年。状況は(冒頭でも書いたように)随分と変わりましたが、「消失」はなんとこの夏7月20日に小説化もされました。その小説版のために用意されたcosMo@暴走P氏の新曲がこちら。たまたま偶然、当方は7月1日当日にこの動画をニコ動で見ましたが、アップロードされた後たった4時間でこの曲は70万回、という再生回数になっていました。大人気、ですね。そりゃあペヤングが「ミクやきそば」作ったり、ファミマが「ミクまん」発売したりするのも当然ですよね。暴走してるのはボカロPでも初音ミクでもなく、大企業のほうなのかも。(2012年7月1日発表)

The Intense Singing of Hatsune Miku (Live)

すでに「ライヴ・パフォーマンス」は初音ミク・ブームを支える重要なコンテンツです。ヴァーチャル・シンギングのみならず、ヴァーチャル・パフォーマンスもファンを魅了しています。というわけで「激唱」のライヴ動画です。ご承知の方も多いと思いますが、初音ミクのライヴは「ヴォーカル」以外をすべて生身の人間が担当する、という明確な意図を持ったステージで、ストリングス等も生で演奏されています。ワイアーを使わずに空を飛んだシンガーは史上初、かもしれませんね。

neu (from the AC Pop'n Music)

そしてここで、初音ミクと直接には関係のない曲を載せます。これはコナミのアーケード・ゲーム「POP'N MUSIC」用に作られたゲーム音楽で、「ニエンテ」というゲームのジャンル名でも知られています(2007年4月発表)。cosMo@暴走P氏が「人生で一番衝撃を受けた」という曲で、本人も公にしていますが「初音ミクの激唱」は完全にこの「neu」をネタ元にして作られています。作曲者はコナミのゲーム音楽作家、少年ラジオこと脇田潤氏。ヴォーカルは常盤ゆう氏。cosMo@暴走P氏は2012年春、この曲の新アレンジ版を手がけています。

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