てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年10月19日〜2012年10月26日分)

 アニー・レノックス。その才能はもちろん、彼女の流儀っていうヤツにはいつも興味があります。意気投合し恋仲にもなったデイヴ・スチュワートとは「創作活動のために」恋愛関係を解消するとか、宗教家と結婚するも半年で離婚するとか、彼女なりの流儀っていうのはおそらく彼女の論理でしか説明がつかない類いのモノなんだろうな、と推測されるわけです。ああいったルックスなので同性愛者と思われがちですが、2度の結婚を経て、音楽の道へ進んだ長女+モデルとして活躍する次女の母親でもあります。そんな彼女は最近引退をほのめかす発言をいくつか残していますが、ぜひとももうひと頑張りして欲しいなあ、と思っています(2012年10月19日更新分/選・文=大久)


Annie Lennox / Stay By Me (1992)

 92年、ソロ・アーティストとして歩みを始めた彼女が、スイス・モントルーのジャズ・フェスティヴァルに出演した時のライヴ映像です。ユーリズミックス時代、どうしてもその奇抜なルックスとエレクトリック・サウンドに話題が集まっていたわけですが、こうして「シンプルな女性シンガー」として再出発した、ということになるのでしょうか。ちなみにこの曲のスタジオ・バージョンは「マンチェスター」色がバリバリのグラウンドビートなのですが。


David Bowie & Annie Lennox / Under Pressure (1992)

 "Absolutely... Fabulous"。フレディー・マーキュリー追悼コンサートでのアニーは、出場者全ての中でもブッチギリで美しく、素晴らしいパフォーマンスを残しています。デヴィッド・ボウイは彼女にとってメチャ憧れのアーティストですが、ハッキリ言って完全にボウイを食いまくってますよね。実はこの共演のリハ動画も残されており、そちらは別の意味で素晴らしい出来です(袖にいるジョージ・マイケルがこの2人のリハを見て、すっかり“少年”に戻ってしまってる姿が確認できます)。

Annie Lennox / Bridge Over Troubled Water (2010)

 こちらは2010年にイギリスBBCのSPORT RELIEF(スポーツ&エンタメを通じて募金を募る、チャリティー番組)に出演した際のピアノ弾き語り。歌うのはご存知サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」のカヴァーです。余談ですが、ここ数年彼女は人前にカジュアルで出る時にいつもこの「HIV POSITIVE」のTシャツを着ていますね。そのせいでファンの間で大騒ぎになりましたが、このTシャツもチャリティーの一部です。そして余談その2。曲のエンディングで彼女が弾いたピアノが、デヴィッド・ボウイ「LIFE ON MARS?」のフレーズだ、とお気付きになりましたか?


Annie Lennox / There Must Be My Angel (2012)

 最新の動画です。今年6月4日、バッキンガム宮殿前で行なわれたエリザベス女王のダイヤモンド・ジュビリー祝賀コンサートに出演したアニーが、「THERE MUST BE MY ANGEL」を歌います。ここでは(1985年のオリジナルPVでも身にまとった)天使の羽根を付けてパフォームしていますね。08年頃に彼女は大きな怪我をした、という噂がありますが、確かに以降彼女は「体がボロボロで歌も歌えない」と何度も発言しており、動きも少し辛そうに見えますね。しかし表情に一切それを出さないあたりがアニーらしいとも思えます。

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 実は大昔から洋楽の曲紹介というテーマにおいて「日本語を使った曲」を集める、というのは、かなりの「大ネタ」でした。なので、それなりに洋楽に親しんだ方であれば、いくつか有名な例をすぐに思い出すであろうことは容易に想像できます。例えばポリスが日本語で歌った「DO DO DO DE DA DA DA」とか、クイーンの「手を取り合って」とか、スティクスの「ミスター・ロボット」とか、カルチャー・クラブ「戦争のうた」とか。今回はその「大ネタ」に当方もあやかろうと思います。(2012年10月19日更新分/選・文=大久)


Badfinger / No One Knows (1974)

 クリス・トーマス・プロデュースによるバッドフィンガーのラスト・アルバム『WISH YOU WERE HERE」は中々の傑作だ、と思っているのですが、世間様の評判はあまりよろしくないようです。ピート・ハム自殺直前に録音されたこともあってそういうニュース性に内容が負けてしまうのかもしれません。曲中「誰も知らない」とつぶやく女性は当時のクリス・トーマスの彼女、元サティスティック・ミカ・バンドの福井ミカさんです。

David Bowie / It's No Game (Part 1)(1980)

 ミカ・バンドときたらこの曲を出さないワケにはいきません。というのも実はこの曲のナレーションは当初福井ミカさんに依頼がいくも断られ、その後ミチ・ヒロタさんに代役が回ってきたそうです。80年「SCARY MONSTERS」の冒頭を飾るこの曲はなんだかドロドロとした日本語が耳にこびりつくフリーキーな曲ですが、ド変態なギターを弾いてるのはロバート・フリップ。ミチ・ヒロタさんはスパークス『キモノ・マイ・ハウス』のジャケに映る右側の女性、としても有名ですね。


Humpe & Humpe / Yama-Ha (1985)

 これを「日本語の曲」と紹介するのも違う気もしますが、世界に通用する日本語を列挙したらこうなった、という単純明快な例だと思われます。ノイエ・ドイチェ・ベレ、というよりも世界進出を狙ったジャーマン・エレ・ポップ姉妹のセカンド・シングル曲。フンペ・フンペはハワード・ジョーンズやヒューバート・カーの作品にも参加した経験があります。

Martika / Toy Soldiers (1989)

 当時から「んー…」と苦々しく思ってました。全米No.1になったマルティカ嬢の代表曲ですが、折角苦労して1位になったのに日本語で歌わなくてもいいじゃんか、と。こういう過剰サービスって、逆に楽曲をスポイルするんじゃねえか?なんて。でも思いのほか日本語も上手で(笑)、無下にもできねえなあ、と。日頃から「日本通」を自認するD・ボウイもこんな曲を出すくらいなら、少しはマルティカの努力を見習って欲しかったですね。



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 じつは「てりとりぃ」関係者には、喫煙者がほとんどいません。というか、今の東京では喫煙者なんてほとんどいませんよね。指の間に何やら挟んでいるだけで、もう指名手配犯のように周囲からキツい眼差しを頂戴することになります。海の向こうでは「吸ったら死ぬ!」なんてデカデカと印刷された煙草が売っているわけですけど、それでも当方は愛煙家です。やめるつもりも全くありません。さて、今回は「昔、名曲のそばには煙があった」という特集です。見てるだけなら死にませんので、ご安心ください。(2012年10月26日更新分/選・文=大久)



Miles Davis / So What (1959)

おそらくマイルスの「SO WHAT」の演奏動画では一番有名なもの、と思われる、59年4月2日録音のTVライヴ。コルトレーン、キャノンボール、ウィントン・ケリー、ポール・チェンバース、ジミー・コブ、そしてギル・エヴァンスのオーケストラを率いる帝王マイルスのお姿です。冒頭の司会者が既にモクモクと煙をたなびかせて喋ってますが、冒頭のパートを吹き終わった帝王が、コルトレーンに後を託して自分は2分半の煙草休憩に入る、という素敵なシーンが拝めます。

Wes Montgomery / Nica's Dream (1965)

65年4月、オランダでのウェス・モンゴメリーのライヴ映像。ラジオ放送用にオランダのミュージシャンを交えて録音されたとのことですが、何故か映像が残ってるんですね。感謝です。ここでは名曲「NICA'S DREAM」のみを掲載しましたが、全セッションを収めた30分の動画もあります。くわえ煙草でギターを演奏するウェスの写真も多数残されていますが、それはやはり、彼が「ピックを使わない」ギタリストだからなのかもしれませんね。

Monica Zetterlund with Bill Evans Trio / Waltz for Debby (1966)

YOUTUBE版が埋め込みできないので、デイリーモーション動画でのご紹介となります。YOUTUBEの方で誰かが「だれか彼女にもう一本煙草やって!」というコメントを残してましたが、さあこれから歌うって時に煙草を用意するというモニカ・ゼタールンド嬢のクールなお姿を拝見できます。彼女が66年にビル・エヴァンス・トリオと残した「WALTZ FOR DEBBY」は有名ですが、その名曲のライヴ映像。66年10月、コペンハーゲンで残された映像ですが、ノリノリのモニカ嬢&エヴァンスの姿は何度見ても感動します。

Baden Powell / Manha de Carnaval (1970)

個人的に一番驚いてしまったタバコ動画。いやまさか、クラシック・ギターを演奏しながら、しかも右手にタバコ持つかね? うわー灰落ちちゃうよ、とドキドキしながら、この超名曲のソロ演奏を堪能しましょう、というスリリングな動画です。バーデンのギターはボロボロですが、これは彼が子どもの頃に家にあったモノをおばあさんから譲り受けた、と言われているギターで、彼は長らくこのギターのみでステージをこなしたとも言われています(さすがに80年代以降は別のものを使用していますが)。

Jimmy Page / Chopin, Prelude in E minor: Op28, n.4 (1983)

最後もギタリストになっちゃいました。スイマセン。83年チャリティー・コンサートに出演して、ショパンの「プレリュード」をギター・ソロで演奏するジミー・ペイジ先生の動画です。曲中ずーっとモクモクとフカしています。キース・リチャーズでもクラプトンでもヴァン・ヘイレンでも、ここまで一曲丸ごと喫煙演奏をしたことはないでしょうねえ。余談ですがペイジ先生のこのギターは「Bベンダー・テレ」といって「肩でチョーキングする」という特殊な改造を施されたギター。

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