2012年11月30日(金)

ヒトコト劇場 #14
[桜井順×古川タク]






舞台「Chanson de 越路吹雪 ラストダンス」によせて

 この度、越路吹雪さんを題材にした舞台の音楽を担当させていただくことになりました。資料の13回忌ボックスセットのブックレットを読むと、様々な関係者のコメントが。いままで僕がサポートさせていただいた、雪村いづみさん、木の実ナナさん、坂東玉三郎さんのお名前もあります。
 そして、ヤノピの親父こと父・啓介に話を聞いたところ、藤家虹二クインテットで録音に参加したことが

あるとのこと。その後は越路さんの夫・内藤法美さんに気に入られての録音も数回。お宅にもお邪魔したことがあり、越路さんと岩谷時子さんと三人で食事したこともあるそうな。昨年、宝塚OGでのトリビュートコンサートでは音楽監督とバンマスも務めていました。どうやら僕も間接的にではありますが、ご縁があったように思えてなりません。
 さて、今回の舞台の音楽面での大きな特徴として、

自動ピアノがあります。これがなかなかの曲者。例えば稽古中に「この曲の最後の音はちょっと長めに」と思った場合、生の演奏家であればその旨指示すれば済む話ですが、自動ピアノでは一度自分のパソコンを開いて、その音をエディットし、一度音を聞いてみて確認の上、曲を丸々MIDIで書きだして、それを音響チームに渡して、ポン出し用のパソコンに取り込んでもらう、という作業が必要です。変更があった場合、これが延々続きます。これが決して嫌ではなかったのは、自分がテクノが好きで打ち込みをずっとやっていたからかもしれません。しかも自動ピアノはシンセではなく、生で音が鳴るわけですから、この新鮮さもあって飽きることはありませんでした。
 そして自動ピアノは、こ

の為に録音されたバンド編成のトラックと同期されています。こちらは「昭和」なサウンドを心がけました。オリジナルに敬意を表してそのままのアレンジにしたものもあり、場面に合わせてリアレンジしたものもありますが、その際は「リズム、和声、音色は1980年まで」と心がけました。
 録音は都内でもっとも昭和臭漂う(良い意味で)アバコスタジオで。越路さんのレギュラーのバンド編成、

ドラム、ベース、ピアノ、ギター、トランペット、サックス、トロンボーン、パーカッションを基本にバイオリンを加えました。楽器別に分けて録るのが慣習となってしまった現在において、25曲を10時間かけて、あらかじめ打ち込まれた自動ピアノのデータに合わせて一発録りです。エンジニアの鎌田岳彦さんのアイデアで、ドラム、パーカッション以外は同じ部屋で、それぞれのマイクに他の楽器をわざとカブらせました。後から聞いてみると、とて

Chanson de 越路吹雪
ラストダンス


[出演]瀬奈じゅん 斉藤由貴 宇野まり絵 柳家花緑 大澄賢也 別所哲也 [原案・原作]岩谷時子 [劇作・脚本]高平哲郎 [演出]山田和也[音楽]江草啓太

11月23日(金/祝)13:30 山梨・東京エレクトロン韮崎文化ホールBREEZE
11月27日(火)13:00 金沢・北國新聞赤羽ホール
12月4日(火)~19日(水)東京・日比谷シアタークリエ
12月22日(土)12:00/17:00 名古屋・中日劇場
12月29日(土)13:00/18:00、12月30日(日)13:00 大阪・梅田芸術劇場 シアタードラマシティ
もプロツールスで録音したとは思えない、見事に昭和な音像になりました。とは言え、自動ピアノと同期させるというのは、ある意味現代だからできる手法。こ

の辺りはすごく気に入っています。
 精魂込めて作った作品、一人でも多くの方に見ていただければと思います。
(江草啓太=ピアニスト)
写真提供・東宝(ピアノの写真のみ、江草啓太・撮影)/「Chanson de 越路吹雪 ラストダンス」公式HPはこちら




合言葉は、スモール・サークル・オブ・フレンズ!

 もうかれこれ三週間ばかり、ロジャー・ニコルスの音楽ばかり聴いてます。最初は、スモール・サークル・オブ・フレンズの新しいアルバム『マイ・ハート・イズ・ホーム』をただひたすらに。そして途中からは、手持ちのニコルス作曲の音源をすべてリッピングして、それをシャッフルしながらオートリピートで。この原稿のことがなければ、こんなことはしなかったと思うのですが、おかげでいろんなことがわかりました。

 たとえば、ニコルスの曲を書く力がまったく衰えていないこと。今回のアルバムは新曲を中心に録音されているのですが、往年の名曲と比べてもほとんど遜色がありません。とくに「ガール・ウィズ・ア・コンプリケイテッド・ハート」と「サムシング・フロム・パラダイス」の二曲は、ファースト・アルバムに入っていても全然不思議ではない夢見るようなメロディで、しばらくはかかるたびに曲名を確認したほどでした。

 そして彼らの声の魅力。今回のアルバムはサウンド面でこれまでにない趣向が凝らされており、なかには打ち込みの曲などもあるので、アルバム単位で聴いた場合、スモール・サークル・オブ・フレンズの前二作とはかなり違った印象を受けます。けれども続けて聴いてもまったく違和感がないのです。それは彼らのあの絶妙な融け合うようなコーラス・ワークが、本質的には変わってないからで、そのことに気づかされたときは驚きました。
 しかし、最大の発見は、当初もっとも困惑した打ち込みの曲「テイク・ミー・ホーム」でした。この曲の中間部の楽想とコーラスが、自分にとって大切な何かにとても似ていて、それがプリファブ・スプラウトだと気づいたときの歓びといったら! 思えば、プリファ

ブ・スプラウトも最初に聴いたときはその音作りに拒否反応があり、でも繰り返し聴くうちにその唯一無二の世界の虜になったのでした。あまりにも素晴らしいファースト・アルバムのせいで、ぼくたちファンもどうしてもあの雰囲気を求めてしまいがちですが、どうやらそれは間違っていたよ

うです。せっかく彼らがまた活動を始めたのだから、もっといろんなスタイルの演奏も聴いてみたい。そしてそこには思いもよらない可能性がひそんでいるのではないか。今は心からそう思っています。どうかみなさんも、じっくりと耳を傾けてみてください。
 こんなふうに、この十一

月は、店でも彼らの音楽ばかりかけていました。うれしかったのは、何人もの若いお客さまが「今かかってるのは何ですか?」と訊いてくれたことです。「ロジャー・ニコルス」と手帖にメモをした彼や、CDのジャケットをアイフォンで撮影した彼女は、この先どんな音楽と出会っていくのでしょうね。思えばぼくもあのぐらいの歳の頃に、スモール・サークル・オブ・フレンズに出会ったのでした。
(宮地健太郎=古書ほうろう店主)
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今回、残念ながら外れてしまった方々、応募時に添えられたご意見は今後の記事作りに反映させて頂きます。ありがとうございました。また、機会を見てプレゼントを行いますので、引き続きよろしくお願い致します。(編集部)



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