てりとりぃ放送局アーカイヴ(2012年12月28日〜2013年1月4日分)

 例えば『ルパン』には大野雄二がいたように、『スヌーピー』にはヴィンス・ガラルディーという天才音楽家が作品に寄り添って、コミックを盛り上げたわけですが、今回は21言語に翻訳され、世界で4億人の読者がいるという泣く子も黙るアメリカン・コミックの金字塔『ピーナッツ』音楽集です。作者チャールズ・シュルツが大のジャズ・ファンだということは昔から知られていますが、こうしてみるとかなりお洒落なジャズのファンであることも伺えますよね。ピアノ・ワルツが多め、というのも聴き所です。(2012年12月28日更新分/選・文=大久)


Vince Guaraldi Trio / The Great Pumpkin Waltz (1965)

 ヴィンス・ガラルディーが「ピーナッツ」の音楽を担当し始めたのは64年。TV特番のためのBGMを制作したのが最初だそうです。特番は結局放送されませんでしたが、音源は65年にアルバムとしてまとめられ『A CHARLIE BROWN CHRISTMAS』というタイトルで発売されました。今もスヌーピー関連の傑作として知られ、日本でも若い世代のジャズ・ファンにも親しまれている超名盤ですね。

Dave Brubeck / Cast Your Fate To The Wind (1988)

 ガラルディーは76年に急逝しましたが、彼が作った「スヌーピーのための音楽」の数々は、多くのミュージシャンに影響を与えています。こちらは88年、8話のシリーズとして放映された『スヌーピーは宇宙飛行士/THIS IS AMERICA, CHARLIE BROWN」のBGMとして制作されたもので、デイブ・ブルーベックがガラルディー作品をカヴァーしています。ブルーベックお得意の「5拍子」にもご注目。

Wynton & Ellis Marsalis / Little Red-Haired Girl - Pebble Beach (1995)

 マルサリス兄弟の弟として知られるトップ・ジャズメン、ウィントン・マルサリス。彼がピアニストであり、音楽の師であり、そして父でもあるエリス・マルサリスと制作した『JOE COOL'S BLUES』(95年)は、ジャケにも表れているように、大半をガラルディー作品で占めた「ピーナッツ・トリビュート作品」でした。こちらは前半がウィントンのペットを、後半はエリスのピアノをリードに据えたメドレー。

George Winston / Linus & Lucy (1997)

 「スヌーピーのテーマ」という別題で呼ばれることもあり、最も有名なスヌーピー関連楽曲であるこの曲は、ジョージ・ウィンストンのステージでの定番曲でもあるので、スヌーピーに無縁の方でもなじみ深い曲かもしれません。ヴィンス・ガラルディーを敬愛してやまないというジョージ・ウィンストンが(余談ですが彼は熱狂的なドアーズ信者としても有名)、97年に発表したガラルディー作品集より。

David Benoit / You're In Love, Charlie Brown (2008)

 デヴィッド・ベノワもヴィンス・ガラルディーを敬愛して止まない、と公言してるひとりです。彼は85年GRPから発表した『THIS SIDE UP』で既にガラルディー作品を取り上げていますが(そこに収録された「LINUS & LUCY」がラジオで大ヒットしたことにより、スムース・ジャズというジャンルが生まれています)、こちらは08年、ベノワが新たにピーナッツ関連曲を録音・制作した『JAZZ FOR PEAUTS』収録曲。

Charles Schulz Draws Charlie Brown (1964)

 最後はオマケ。冒頭で書いた「未放映だったピーナッツ特番』のワンシーン。チャールズ・シュルツが実際にチャーリー・ブラウンの絵を書いてみたよ、という貴重なシーンなわけですが、これスゲエっすよね。なんの迷いもナシに、あの顔を一気に描けるモンなんでしょうか。この特番は現在DVD発売されており、この動画も公式にアップされたものです。
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 2012年4月から、日本の中学校では学習指導要領の改訂にともない、体育の授業科目にヒップホップのダンスが取り入れられることになりました。そんなワケで、是非日本中の中学体育教師の皆様は以下の動画を見て勉強して下さい。踊りもそうですけど、何よりも大切なのは「ヒップホップとは何か」ということです。昨今はネコもシャクシも文科省も「ヒップホップは〜」とか軽々しく口にしますが、教職につかれる方々であれば、せめてその基本くらいはご理解いただけると幸いです、なんて。(2012年12月28日更新分/選・文=大久)


Afrika Bambaataa & Soul Sonic Force / Planet Rock (1982)

 これを路上でやってしまうところがヒップホップの、もしくはアフリカ・バンバータの素敵なところ。大魔王ルックのバンバータが大都会NYのド真ん中で「説教」する際のバックに流れているのが、クラフトワークの「TRANS EUROPE EXPRESS」&「NUMBERS」という2曲のミックス・トラックだったのも要チェックです。ミックスはこの後にトップ・エンジニアとなりひとりで全米チャートを牛耳ることになったアーサー・ベイカー。PVは最も初期のブレイクダンスが収録されてることも重要です。


Hey You / The Rock Steady Crew (1983)

 マルコム・マクラーレンの80年代の一連のヒップホップ作品でもフィーチャーされていたロック・ステディー・クルーは、NYのブレイクダンス集団で、70年代から現在にかけても(代替えを続け)活動するチームです。多くの有名ダンサーを輩出しましたが、彼らの歴史の中でも最も有名なのがこの曲。プロデュースはマルコム作品の共同制作者でもあったスティーヴン・ヘイグで、欧州でのみ大ヒットしたブレイクビーツ・クラシックです。

Herbie Hancock / Rockit (1983)

 なんといっても日本ではブレイクダンスをそのまま「ロボットダンス」と呼ぶくらいですから、本物のロボットの動きはダンサーにとって当然超一級の研究対象です。曲はジャズ・ピアニストのハービー・ハンコックがファンク・ベーシストのビル・ラズウェルと制作したエレクトロ・ビーツの超有名曲。スクラッチは当時のNo.1 DJ、グランドミキサーDST。そしてこのPVを制作したのは、元10CC、後に独立してからもアーティストとして、そして映像作家としても有名になったゴドレー&クレーム。


Breakin' Turbo Broom Dance (1984)

 80年代初頭、ヒップホップはブレイクダンス、DJスクラッチ、エレクトロ・ビートという3種の神器と共に世界に広まりました。こちらは84年、その名もズバリ『ブレイキン』という映画の一部で、現在に至るまで輝かしい影響力を誇るダンス・シーンです。ここで要注目なのは曲です。クラフトワーク「TOUR DE FRANCE」がそのまま使われています。バンドの意向もありサントラにこの曲は収録されませんでしたが、10 SPEEDという別のユニットによる同曲の「完コピ・バージョン」が収録されました。


Jimmy Castor Bunch / It's Just Begun @ Flashdance (1984)

 さて、以下は「ブレイクダンス」と「ヒップホップ」が世界中に広まった証拠ともいえる象徴的な動画の数々です。こちらは大ヒット映画『フラッシュダンス』に出てくる、ストリート・ブレイキンのシーン。ここで要チェックなのは、この曲が72年のジャズ・ファンク・クラシック、ジミー・キャスター「IT'S JUST BEGUN」であること、です。動画で「ムーンウォーク」が出てきますが、マイケル・ジャクソンのアレはストリート・ダンサーがMJに教えたもの、なのだそうです。


Chaka Khan / I Feel For You (1984)

 この曲が「ヒップホップ」と関連づけて紹介される機会は少ないですが、その関連はもうこのPVを見れば一目瞭然。プリンス79年作品のカヴァーですが、スティーヴィー・ワンダーのハーモニカとメリー・メルのラップ(実は冒頭の「CHAKA CHAKA....」というラップ部分は事故的に録音されたもので、アリフ・マーディンの判断で「イキ」にした、とのこと)をフィーチャーしたこの曲は、エレクトロ・ファンクの生みの親といわれる元システムのデヴィッド・フランクが曲の大半のアレンジ/演奏を担当。


風見慎吾 / 涙のTake A Chance (1984)

 本場NYでヒップホップを吸収し、84年に帰国した日本人シンガーが2人います。ひとりは佐野元春、もうひとりは風見慎吾でした。おそらく我が国ではこの曲の存在を抜きにしてブレイクダンスを語る事はできません。実はそれまでTVの歌番組を牛耳ってきた「歌って踊る男性アイドル」達は、高い完成度をもつこの曲のヒットを受けて(そして同年ブレイクしたチェッカーズという存在もあって)強制的に新陳代謝に迫られました。

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 以前この「放送局」で、大御所さんたちの若い頃特集、ていうのをやったことがありますが、今回はその第2弾となります。当然ながら古い映像素材ばかりなので、チョイ役での出演、というものが多くなりますが、それでも大スターとなった後のお姿と当時のお姿では、違ったり同じだったり、といろんな発見ができるのも楽しいですよね。(2013年1月4日更新分/選・文=大久)


Mick Jagger 15 years old (1959)

 タイトルそのままの、ミック・ジャガーさんが15歳の時のテレビ出演映像。どんなストーンズ本を読んでも「ジャガーは幼少の頃から歌っていた」と書かれていますが、その大半は教会で歌っていたものだそうで。動画の中で長々と講釈を垂れているのはミック・ジャガーのお父さんで、彼が学校の教師をやっていたことからこの役がまわってきて、それに息子を連れて出演した、という経緯とのこと。翌年、キース・リチャーズと再開を果たしたジャガーはストーンズを結成し、3年後には全英で最も有名なシンガーになります。

Bee Gees / Time Is Passing By (1960)

 オーストラリア時代、というか、いちばん最初のTV出演、と思われる、ビージーズの子ども時代の歌です。バリー(14歳)、モーリス&ロビン(共に10歳)なので、この身長差はまあ当然ですよね。彼らがレコード・デビューしたのは65年ですが、既にこの時点で「ビージーズ」を名乗っていたのに驚きます。既にご承知のように、現在ご存命なのは長兄のバリー・ギブのみとなりました。
Jose Feliciano at The Original Amateur Hour (1962)

 ホセ・フェリシアーノ、17歳の時の演奏です。ご覧のようにモダン・サウンド・トリオという名のジャズ・トリオでの出演で、曲ももちろんジャズ。しかもホセ・フェリシアーノはエレキギター弾いてますね。冒頭で司会者が言っているように、このトリオは全員が盲目のメンバーとのこと。当時「1日に14時間はギターを弾いていた」という人ですから、当然のようにバカウマ。この後彼はA・セゴビアに直接指導を受け、64年にソロ・デビューしています。
Frank Zappa Playing music on a Bicycle (1963)

 1940年生まれ、アメリカが産んだもっともヒネクレたロック・スターのフランク・ザッパ。高校卒業後に既にローカル・バンドのためにプロの作曲家として楽曲提供していたというザッパは、60年代初期に「TVでオーケストラ演奏を披露して小銭を稼いで」生計を立てたそうです。この動画は63年の米深夜バラエティー番組「スティーヴ・アレン・ショウ」にて「自転車を楽器にする音楽家」として出演したもの。真剣にオバカなことをやるあたりは、さすがザッパ先生、当時から一貫してますね。
David Bowie interview at 17! (1964)

 デヴィッド・ボウイ、17歳のときの映像です。ボウイはこのTV出演の直前に歌手デビューしていますが、ハッキリいって全く売れていません。ただし、この頃マネージャーが(キンクスやザ・フーを売り出した)シェル・タルミーに変わったことで新たに売り出しが計られ、このTV出演になった模様です。番組は「長髪はアリかナシか」という、まるでNHKの討論番組のようなお題で、ボウイが「長髪代表」として(本名のデヴィッド・ジョーンズの名で)出演しているワケですね。
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