2013年4月5日(金)

ワーナー「名盤探険隊」シリーズが2013年遂に復活!
しかもなんと破格のスペシャル・プライス!この機会を見逃すな!

 最初の発売から何十年も経過したレコードを再び市場に送り出す事はレコード会社にとって容易ではない。ただ単に〝いいレコード〟といった理由ではまず発売には至らない。ビートルズやローリング・ストーンズ等時空を超えて訴求できるごく少数を除いて、多くのアーティストは彼らの全数のCDをいつでも買える状態にできていない。要はほとんどのレコード(CD)

は発売から5年もすれば製造中止又は廃盤になり市場から消える。そのような現状にあって廃盤アルバムを再び世に出せるきっかけは、レーベル移動による基本カタログの整備、アーティストの久々のヒット、○周年、来日、死去、曲がCMで使われた等急激な需要の上昇、そして最も大きなものとして、熱心なリスナーや関係者からの再発要望がある。本来レコード会社はそうい

うマーケットからの需要を真摯に受け止め音楽ファンに音楽を届ける使命を持っている、と私は考える。
 ワーナーミュージック・ジャパンはその昔ワーナー・パイオニア時代の1970年代最後期に『ワーナー名盤復活シリーズ』という再発のキャンペーンを始め、ジョン・サイモン、フィフス・アヴァニュー・バンド、ボビー・チャールズ他日本盤として出ていなかった〝幻の名盤〟を紹介した。98年にはCD化が遅れていた70年代のポップ、ロック、フォークの名盤をCDにして次々と音楽マニアのもとに届けた。シリーズ名は『名盤探険隊』。レコード会社とユーザーが一体となって未知なる名盤を探し出す冒険の旅だった。エンヤ、マドンナ、エリック・クラプトンといった新譜を担当していた私は、このシリー

ズには一切関係せず、趣味に生きるオトナ達の楽しげな遠足を横目で見ていた。それから早15年。時は来た。私はカタログ再発担当となりこれら諸先輩方が切り開いた名盤復刻シリーズのスピリットを継承して『新・名盤探険隊』をスタートさせた。これは前シリーズ同様70年代のロック黄金時代にリリースされた名盤を中心にCDで復活させるもので、オリジナル『名盤探険隊』作品(現在廃盤)と、今回が日本初/世界初という混成部隊。いずれにせよ2013年の現在でも鑑賞に堪えうる作品のみをジャンル、時代を広げて紹介するもの。特筆すべき点は4点。①すべて本年リマスターを施された現在の肥えた耳にも十分堪えられる音質。残念ながら90年代のリマスターはしょぼくてつらい。②著名音楽ライターによる

新規書き下ろしライナーノーツ。原則過去の作品に添付されていた解説の流用はしない。40年近く前の作品でも現代的視点が欠如した解説はあくまで〝新譜〟としてリリースされる本シリーズには不適切。③歌詞及び対訳付。本シリーズはシンガー・ソングライター作品が多いため必須。④1200円(税込)という魅力的価格。一枚でも多く、一人でも多くの方に買っていただくための身を切る太っ腹価格。『新・名盤探険隊』は4月10日に第一弾21枚が発売、以降毎月6から10枚ずつを予定。今回もレコ崎レコ郎、ハカセ、レコガシラくんら3人の探険隊員がイメージ・キャラクターとなり本シリーズを盛り上げます。いざ、〝名盤の深い森〟に向かって出発!
(宮治淳一=ワーナーミュージック・ジャパン)
ワーナー人気再発シリーズが待望の復活!新・名盤探検隊 シリーズ 2013

構想1年あまりを経て、ようやくあの『名盤探険隊』が帰って来る! 1998年から2000年にかけて好評を博した同名シリーズがリニューアル。当時発売になった作品と初めて発売になる作品の混成部隊で、いずれも2013年の現在でも鑑賞に堪えうる優れた作品達が待望の復刻!

ジャケ写は、4月10日発売の第1回アイテムから。左から、ジェニファー・ウォーンズ『ジェニファー』(72年作品/世界初CD化)、アズテック・トゥー・ステップ『アズテック・トゥー・ステップ』(72年作品/日本初CD化)、ジャッキー・デシャノン『ジャッキー』(72年作品/日本初CD化)、レニー・ルブラン『レニー・ルブラン』(76年作品/世界初CD化)。この他第1回発売ではジョー・ママ、ドクター・ジョン、ネッド・ドヒニー他21タイトルを一挙発売。

■スペシャルプライス定価1200円(税込) ■2013年最新リマスター ■著名音楽ライターによる最新書下ろしライナーノーツ ■歌詞・対訳付 ■毎月6から10タイトルをリリース予定




没後30年の今だからわかる寺山修司の全仕事
ムック「寺山修司の迷宮世界」が発売

 寺山修司さんが亡くなってから、30年が経つそうです。今20代の僕が通っていた大学では、アングラ演劇出身の教授が「芸術論」を教えていました。ほかにも「学生運動の歴史」の講師が、どうも全学連の生き残りらしかったり。アングラ演劇や学生運動を、大学の広くて、明るくて、小奇麗な教室で学ぶのです。そこはちょっとした異空間で、肉体的にも精神的にもバトルを辞さなかったあの時代

の残り香を感じてはビビっておりました。
 寺山修司さんと言えば、詩人、俳人、劇団「天井桟敷」の主宰であると同時に、「家出のすすめ」を著して学生たちを挑発していた、反抗する若者たちの元締めのような人だと思っていま

した。遺された作品に感じるギラギラしたカミソリのような鋭さは、〝リベラルになった大学〟に飼い慣らされた学生にとって、恐いなんてもんじゃありません。そんな寺山さんの思想に感化され、本当に大学を飛び出した友人もいましたが、正直僕はバカだと思いました。それこそ膨大な著作がある寺山さんのほんの一部を知っただけでなぜそこまでできるのか、と。偉大な人だとわかっているからこそ、どこから理解したらいいのかまるきりつかめなかったのです。
 今回洋泉社から出版されたムック「寺山修司の迷宮世界」はそんな悩める現代の学生にはもってこいのガイドブックになるかもしれません。詩、俳句、演劇から、歌謡曲、写真、競馬予想まで、いわゆる「マルチタレント」になることを拒

否しながら各方面で活躍した寺山さんの仕事のすべてを全方位から検証しようという1冊です。「天井桟敷」本公演34作の全解説や、テレビ、ラジオへのシナリオ執筆リストは後追いの世代には本当にありがたい資料です。もうひとつ目を引いたのは189冊にも及ぶ全著作リストで、刺激的なタイトルを並べて見ているだけども楽しいですし、気になったタイトルを覚えておいて、古本屋さんへ出かけることもできます。そして寺山さんと共に作品を作っていた方々の話――森崎偏陸さん、萩原朔美さんが長編映画、実験映画の解説を書かれていたり、横尾忠則さんが自作のポスターに一言ずつ解説を寄せていたり、劇団の結成当時を穏やかに回想されているのを読んでいると、皆さんが気軽に手招きをしているようで、そ

れまで感じていた敷居の高さがスッと消えていきます。
 さて、生まれたときには既に世を去っていた寺山さんと自分の接点を探っていて思い出したことがあります。僕が美術雑誌の編集部にいたころ、横尾さんが誌面に出てくださったことがありました。もちろん下働きの僕は取材には行けませんでしたが、あの時代と自分の人生がようやく繋がったように思えてとても嬉しかったものです。寺山さんの遺した仕事や想いを探るときは誰でも、きっとそれぞれの想い出を手探りで掘り起こすことになるのではないでしょうか。
(真鍋新一=編集者見習い)
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■洋泉社MOOK「寺山修司の迷宮世界」監修・笹目浩之 ■A4変・128ページ ■洋泉社より税込1680円で発売中



『原田真二デラックスブック』発売によせて


 わたしのここ数年のライフワークとなっている原田真二アーカイブ。昨夏のCDボックスに続いて今年は近代映画の記事をまとめた復刻本を制作、「原田真二デラックス」として4月1日より専用サイトと一部ライブ会場で限定発売される。
 同書には過去の近代映画に掲載された原田真二関連の記事がすべて復刻されるため、制作にあたりまずは70年代後半に発売された近代映画のバックナンバーのチェックからスタート。雑

誌の隅々まで精査していく過程のなか、大掃除のときの古新聞のごとく、関係のない記事に気を取られてしまい、気持ちは一気に小学生時代にタイムトラベルしてしまった。ちなみに原田真二の記事は「てぃーんずぶるーす」などのシングルをヒットさせ、一躍トップアイドルに上り詰めた78年に集中しており、復刻本の大半がこの1年間の記事で占められる。その12冊を重点的にチェックしていたのだが、ページをめくるたび

に78年がいかに話題に溢れ、エポックな年であったことを思い知らされた。
 78年といえば、「ザ・ベストテン」がスタートした年。この番組をきっかけにヒットチャートの概念が広く浸透し、それにより音楽ファンの年齢層が下がり、シングルヒットのジャンルレス化を推進していったことが、近代映画の誌面から顕著にうかがえる。この年4月に解散したキャンディーズと入れ替わるように石野真子や榊原郁恵、大場久美子といった十代のアイドルが誌面を賑わせ、水着写真が急増。そういえば自分が初めて部屋に貼ったポスターは石野真子だった。
 そして、サザンがデビューして矢沢永吉が「時間よとまれ」でブレイクしたのもこの年の夏。ロック御三家の活躍もあり、アイドル誌にロック系のアーティス

トの記事が増えていく。
 この時期、アイドルシーンの本流として人気を博しているのは山口百恵と郷ひろみ。山口百恵のページはほとんどが三浦友和とのツーショットで、この時点ではまだ交際宣言をしていないにもかかわらず、映画のパブリシティで堂々と仲睦まじいところを見せている。
 一方の郷ひろみは主演ドラマ「ムー一族」が人気。当時、久世光彦ドラマとは知らずとも、子どもながらにこのドラマの先進性を肌で感じ、毎週楽しみにしていた。岸本加世子や桂木文の紹介記事でも「ムー一族」が取り上げられ、人気の度合いを知ることができる。
 78年は紅白のトリを史上初で演歌以外の歌手、沢田研二と山口百恵が務めたことで話題になった。また原田真二や渡辺真知子などのニューミュージック系のア

ーティストがこぞって出場したことも、新しい音楽シーンの到来を感じさせた。たかがアイドル誌、されどアイドル誌。その誌面には時代の空気が充満しており、今もその魅力を雄弁に物語る。そして改めて自分の歴史意識を気づかせる。
 70年代と80年代を繋げる重要な役割を果たした78年。それを象徴する存在が原田真二だったと、「原田真二デラックス」を作って強く感じる。もっと正当な評価なり、研究がなされてもいいのはないか。そういったことを危惧しつつ自分の原田真二アーカイブはこれからも続く。
(竹部吉晃=編集者/ライター)
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「原田真二 デラックスブック」価格:5000円(税込)+送料/詳細と注文はこちらのHPから。