てりとりぃ放送局アーカイヴ(2013年5月10日〜2013年5月24日)

 忘れた頃にやってくる「初音ミク」特集。今回は世界中で賛否両論の大きな論争ともなっている、初音ミクのコンサート映像特集です。2011年夏、米LAのノキア・シアターで行なわれたコンサートはもはや伝説的ともいえるようなものでしたが、実はそれ以前も、そしてそれ以降も、次々と伝説を更新しまくる初音ミク。好き嫌いは各々あるでしょうが、これほどのスピードと規模で「自己更新」を続けるアクトは、歴史上他に存在していません。(2013年5月10日更新分/選・文=大久)


秘密警察(39's Live Party 2013 in Kansai)

まずは最新ライヴ・コンサートから。2013年3月9日、和歌山で行なわれた「ミクパ」は、関西で初めて行なわれた「ミクパ」でした。なにやらオッカナイ歌詞をもった曲ではありますが、ここはステージの後ろに流れる頭の悪そうな文字面を純粋に楽しんだモノ勝ち、という曲でもあります。究極のロックンロール・スター、てカンジですが、それにしても関西のお客さんの盛り上がり、スゲーっすね。

千本桜(39's Live Party 2013 in Sapporo)

こちらは2013年2月、雪まつりにあわせて開催された札幌公演より。曲は(昨年のJOYSOUNDカラオケ・ランキング2位、という人気曲でもある)「千本桜」です。それにしても、2月の札幌市民ホールで2日間4公演をソールドアウトする、というその勢いは、もはやガチ。初音ミクが「札幌の中小企業から生まれたローカル・スター」だったなんてことは、もはや関係ありませんよね。

Tell Your World(Live Concert in Taiwan 2012)

2012年秋、初音ミクはアジア・ツアーを敢行しています。こちらは10月6日に台湾で行なわれたライヴの模様。曲はGoogle ChromeのCMに使用された世界的ヒット曲なので、勿論当地でも人気が高い模様がうかがえますが、お客さん全員が曲を「歌ってる」のにはさすがに驚きましたね。台湾では2公演が行なわれ、9000人を動員。日中関係が最も冷えきったその時期ではありましたが、この4日前の10月2日には香港でもコンサートが開催され、2公演で6000人を動員しています。

39(夏の終わりの39祭り/2012)

昨年の夏にもチラリとご紹介しましたが、2012年8月29日、横浜赤レンガ倉庫前で行なわれたスペシャル・ライヴ。高さ20mほどに吹き上げられたウォーター・スクリーンに投影された初音ミクが歌うというファンタジックなイベントで、4曲が披露されました。ほんの20数分のライヴでしたが、昨年度当方が「しまった、無理してでも見に行けばよかった」と後悔したライヴ第1位、のイベントでした。

冨田勲×初音ミク「イーハトーヴ」(2012)

こちらは2012年11月23日、東京オペラシティで催された、冨田勲の最新オペラ・コンサート「イーハトーヴ」に初音ミクが出演した模様。フルオケと少年少女合唱団を交えて、あの初音ミクが歌い踊る、という、まさに異次元のコンサート。動画は日本コロムビアが公式に配信している同公演のトレイラー映像(同公演を収めたCDにはアンコールで上演された「リボンの騎士」も収録)。この冨田X初音ミクのコラボによる「イーハトーヴ」は、今夏再上演されることが決定しています。

渋谷慶一郎×初音ミク「THE END」(2013)

さて、ライヴ映像ではないのですが、こちらは今年の5月末からBunkamuraオーチャード・ホールで開催される初音ミクの新作オペラ「THE END」のトレイラー映像です。音楽をクラブ系エレクトロニカ・サウンドで活躍する渋谷慶一郎が担当した、冨田センセのモノとは違った異次元世界の公演、となりそうですね。このオペラのために衣装デザインはルイ・ヴィトンが新作を提供しています。
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 そろそろ編集長からお怒りのメールが届きそうな気もしますが、2週続けての初音ミク大特集。今回は名曲集です。既に初音ミクのオリジナル曲は数万曲にものぼり、当方も全部を追っかけてるワケではありませんが、今も人気の高い「クラシック・ソング」を選んでみました。初期衝動、思いつき、やる気と根気、そしてDIY精神。いずれも賞賛に値する、21世紀のパンク・スピリット。感服します。(2013年5月17日更新分/選・文=大久)



OSTER project/恋スルVOC@LOID

VOCALOID「初音ミク」が発売されたのは2007年8月31日。そして初音ミク関連楽曲の中でも、代表作の上位にランクされるこの曲が発表されたのは、同年9月13日です。仕事、早いです。しかも曲もカンペキです。完全なアイドル・ポップスでありながら、歌詞が「初音ミクの使い方」に言及している点も聞き逃せませんね。ライヴでも大定番の1曲です。

ryo(Supercell)/メルト

2007年12月に発表され、現在までに900万回再生(@ニコ動)された、初期初音ミクのNO.1人気曲。ピアノ・ロック調を得意とするryo氏は、その後コラボ・プロジェクトであるSupercell名義で多くの人気曲を発表することになります。絵/映像の好き嫌いはかなり分かれそうではありますが。


livetune/Last Night, Good Night

2008年7月31日発表曲。作者KZ(livetune)氏にとって3曲目の「ミク」楽曲だったという前曲「ファインダー」の爆発的支持を経て発表されたミッド・バラード。この曲を最後にニコ動を離れたKZ氏はその後商業ベースでのクリエイター活動に転身しました。もちろん現在では、2011年に世界的な支持を得た初音ミクの代表曲「Tell Your World」の作者としてもお馴染みかと思われます。


DECO*27/愛言葉

作者の名前は「デコ・ニーナ」とお読みするのだそうです。ニコ動での活躍が契機かどうかは不明ながら、現在は柴崎コウ等と「galaxias!」というユニットでも活動されているクリエイターさんです。09年4月発表のエレクトロ・ニューウェイヴ色濃い「相愛性理論」で人気を博し、続いて同年7月に発表されたこちらの「愛言葉」で爆発的な支持を得ました。こちらもライヴで大人気の曲ですね。

Supercell/ODDS&ENDS(第10回MMD杯本選出品作 by Brother)

2012年に発売されたゲームソフト「Project Diva」の為に書き下ろされた、Supercellの新曲「ODDS&ENDS」ですが、こちらの動画はその楽曲を用い、MMDというソフトで別な動画制作主によって作られた「非公式PV」。MMDとは「Miku Miku Dance」の略で、初音ミクを「ユーザーが好き勝手に踊らせることができる」という動画作成フリーウェア・ソフトですが、MMDの爆発的普及によって「動画コンテスト」も定期開催されています。この動画はそのコンテスト出品作。ところでこの曲、初音ミクが「息継ぎ」してるの、お気づきになりましたか?


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 フランスを代表するギタリストとして、やはりジャンゴの名は筆頭に上げられますが、彼はもちろんスウィング期のみの作品しかありません。以降バップやモード、フュージョンといった時代に、文字通りフランスを代表するギタリストとなったのは、ジャンゴのいとこでもある、ハンガリー生まれのジプシー、エレック・バシック(1926-1993)でしょう。今回はバシックのキャリアをおさらいしてみました(2013年5月24日更新分/選・文=大久)


"Stormy Weather" on "Bell, Book and Candle" (1958)

 ジャック・レモン、キム・ノヴァク等の有名人が出演してることで知られる58年公開のロマンティック・コメディ「BELL, BOOK AND CANDLE」のワンシーン。クラブでの演奏シーンで、ペットを吹いているのはキャンドリ・ブラザーズ、そしてストラトを弾いているのがエレック・バシックでした。この後、60年代になると彼はフランスを拠点に音楽活動をするようになったそうです。

Serge Gainsbourg / All The Things You Are (1964)

 60年代以降、フランスの音楽界にて多くの仕事を残してるバシック。こちらは64年、セルジュ・ゲンズブールがジャズ・スタンダード「ALL THE THINGS YOU ARE」を演奏する、というなかなか興味深いシーン(ゲンズブールのDVDに収録されています)ですが、後ろでモクモクと煙草をフカしながらザックザックとリズムを刻んでいるヒゲの伯父さんがエレック・バシックです。

Elek Bacsik / Take Five (1964)

 バシックはジャンゴ同様にジプシー・ミュージシャンで、最初バイオリンから音楽演奏を始めた、という人なので、バイオリンも当然ですが他の楽器もなんでもゴザレ、という音楽家でした。こちらは64年、フランスのTV曲に残された映像で、ブリューベックのスタンダード「TAKE FIVE」をバシック・アレンジで、そしてバシックが全ての楽器を演奏してみた、というオモシロ映像。


Jeanne Moreau / Les Mains sur les Tempes (1966)

 60年代フランスを代表するギタリストとなった彼は、当然ながら多くの客演でも名演奏を残します。ジャック・カネッティ制作によるジャンヌ・モローの名盤『12 CHANSONS NOUVELLES』(66年)は、伴奏はベースとバシックのギターのみ、というシンプルなアレンジですが、このアルバムの編曲は全てエレック・バシックによるものでした。


Elek Bacsik / I Love You (1974)

 66年以降活動の拠点をアメリカに移し、米国籍も取得したバシックは、74年にエルヴィン・ジョーンズ、グラディー・テイト、バッキー・ピザレリ、ハンク・ジョーンズ等をゲストに迎え、リーダー作『I LOVE YOU』を発表。実は62年に『BOSSA NOVA』というボサ作品も残してる彼ですから、ラテン・ムードな作風も得意としていました。バシックは93年、肺がんで亡くなっていますが、晩年はカナダ・ケベックで演奏活動を行なっていました。

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