てりとりぃ放送局アーカイヴ(2013年7月12日〜2013年7月26日)

 昨年夏に上梓したディスクガイド本「日本の女性アイドル」にて、頁の都合で触れる事のできなかった切り口のひとつに「TV-CM」があります。アイドルといえば、歌や演技よりも何よりも「CMで顔を売る」ことが重要なテーマであり、それは今も不変の論理です。さて今回は、MUSIC JACKET GALLERY 2013開催記念、アイドル達が出演しまくった70〜80年代のグリコ「ポッキー」TV-CM集です。日本のアイドル文化の1/3くらいはポッキーで出来てるんじゃ?と思える程この文化に多大なる貢献をしたポッキーの業績を検証してみます。(2013年7月12日更新分/選・文=大久)


POCKY TVCF(岡田奈々/1977)

 グリコのポッキーは1966年発売開始。以降、小林麻美や島田陽子といった時代のトップ女優をTVCFに起用していましたが、アイドル歌手を起用したのは1975年以降のことで、その初代は木之内みどり、続いて登場したのが岡田奈々でした。彼女は80年までポッキーガールを続けましたが、動画は1977年のTVCFで、チェリッシュが歌うオリジナルCMソングでも有名なもの。浅野温子(当時16歳)が出演していることでも知られますね。それにしても衣装がスゲエ。

POCKY TVCF(松田聖子/1981)

 子供心に「意味不明の所作を繰りかえすモンドなCM」という印象を強く抱いていました。何故「旅にはポッキー」なのか、一切の説明を拒否する強引極まりない映像ではありますが、こちらは81年秋にON AIRされた「加賀・能登半島編」。同シリーズCMとして「京都編」「函館編」等もあり、それぞれの撮影風景を自身が解説するメイキング映像も多数残されています。 それにしても髪のボリュームがスゲエ。


POCKY TVCF(菊池桃子/1985)

 「桃子、ポッキーいきまァ〜す。」という威勢のいいキャッチコピーがついていますが、そんなファースト・ガンダム的なノリとは真逆の、王道の青春恋愛プロット。とはいえ、いまこんな乱暴な自転車の乗り方をしてたら間違いなく警察に連行されてしまいますよね。撮影は岡山県の片上鉄道吉ヶ原駅ですが、現在この路線は廃線となっています。

POCKY TVCF(本田美奈子/1987)

 「1986のマリリン」で前年大ブレイクした本田美奈子。翌年からポッキーのCMに出演していますが、いきなり髪を短くし、さらなるイメチェンを披露しています。丁度この時期「パパはニュースキャスター」に出演、同ドラマの主題歌「ONEWAY GENERATION」が彼女の最大のヒット曲となった時期に重なり、女性アイドルというスタイルが新陳代謝を始めた時代、と言えるかもしれません。

POCKY TVCF(南野陽子/1988)

 88年。北海道でオフを過ごすという設定や、片田舎の駅のホームでポッキー食べてノホホンとリラックス、という設定も、過去のポッキーCMでも多く見られたものですが、ナンノの必殺のセリフ「そうだよっ」の破壊力は、当時絶大でした。撮影は小樽にあるJR函館本線の蘭島駅という小さな駅で、この場所は2005年の映画「NANA」でもロケ地として使用されています。

POCKY TVCF(牧瀬里穂+加藤紀子/1992)

 92年、江崎グリコは企業英文ロゴを(それまでのゴシック体から)筆記体のものへと変更しています。1つぶ300Mのキャラ・ロゴはそのままでしたが、以降キャラロゴも画面からは消え、筆記体の新ロゴがメインで使われるようになりました。その変更時期を挟むように、90年から94年までポッキーのCMに出たのは牧瀬里穂。こちらは92年秋のCMで、共演しているのは同年夏に森高千里のカヴァー「今度私どこか連れていって下さいよ」で歌手デビューした加藤紀子。

POCKY TVCF(JKT48/2012)

 おまけ動画。上記では古いものばかり掲載しましたが、もちろん今もポッキーのCMはアイドル登竜門的存在ですよね(ガッキーが登場した07年以降、なんだか変な方向に走ってるキライも少しだけ感じてしまいますが)。さてこちらはジャカルタを代表(?)するアイドルグループ、JKT48が出演するポッキーのCM。もちろん日本未公開で、曲はAKB48「BABY! BABY! BABY!」のインドネシア語カヴァー。東南アジアでは(タイを中心に)「CHOCKY」という名のポッキーの類似品が昔から(現在も)広く大量に出回っているのですが、今後は風向きも変わりそうですね。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。



 なんとあのニャンギラスがこの21世紀に降臨する、と誰に想像できたでしょうか(笑)。「MUSIC JACKET GALLERY 2013〜日本の女性アイドル」は今度の日曜までの開催となります。週末おヒマな方はぜひ渋谷へ。それはともかく今回もアイドルTV-CM特集。前回「日本のアイドル文化の1/3くらいはポッキーで出来てるんじゃ?」と書きましたが、実は当方は「さらに残りの1/3もチョコレートで出来てるんじゃ?」なんて思っております。今回も江崎グリコの80年代TVCF集ですが、ポッキー以外のもの、となります。(2013年7月19日更新分/選・文=大久)


グリコ・アーモンド&セシルチョコレート(田原俊彦・松田聖子/1980)

 アーモンドチョコも、セシルチョコも、当時とても子供のお小遣いで買えるものではないような超高級品でした。ですがこのCMはお茶の間で大きな話題となり、今も知らない人はいないと思われます。その後ある事ない事を含め、多くの噂も流れることになった2人の関係ですが、それはともかくこの時点でこの2人が完璧にアイドルとしてのキャラを確立し、完璧に演じきっていることには驚かされます。それを裏付ける参考資料として、こんな動画もあります。


グリコ・アーモンドチョコレート(渡辺徹・小泉今日子/1982)

 「約束」という渡辺徹の代表曲(彼のセカンド・シングルにあたります)を生んだこのCMは、もちろん前述の「トシ&聖子」のCMのリメイクとも言えるようなものでした。それはCMの設定のみならず、2人の主人公が着用している衣装の色からも容易に推測できると思われます。トップスター2人の共演、という路線は、70年代の「百恵・友和」や「森田健作・岡田奈々」の時代からグリコの定番作戦でもありましたね。


グリコ・セシルチョコレート(堀ちえみ/1982)

 登場するセーラー服を着た女性アイドルの方には申し訳ありませんが、このCMによって最も恩恵を受けたのはアイドルでもなく、チョコレートでもなく、杉真理というシンガーソングライターでした。同年『ナイアガラ・トライアングルVOL.2』への参加で注目を集めていた彼は、このCMに使用された「バカンスはいつも雨(RAIN)」の大ヒットにより第一線に躍り出ることになったからです。同時に、完全なビートルズ・マナーのポップスが再評価されるというきっかけにもなりました。


グリコ・ファンシーキャル(高橋美枝/1983)

 スタ誕を経て83年に「ひとりぼっちは嫌い」でデビューした高橋美枝。シングル5枚のみの歌手活動でしたが、デビュー曲のB面曲は、このグリコのCMで使用された「ピンクの鞄(トランク)」で、作詞は松本隆、作曲は細野晴臣でした。彼女はその後作詞家に転身し、風堂美起という名義で活動されているそうです。それにしてもCMエンディングの、フリーキーなトースティングには脱帽。


グリコ・セシルチョコレート(岡田有希子/1984)

 デビュー以来3作連続で竹内まりや楽曲を歌った岡田有希子。デビュー曲も84年の「グリコ・カフェゼリー」CMタイアップ曲でしたが、同年9月に発表された3作目の「恋、はじめまして」も、グリコのチョコのCMソングでした。高原のテニスコートで恋に落ちる、という、何度も見かけた設定ではありますが、それにしてもパステルカラーだらけですね。今の色彩感覚からするとちょっと異常とも言えるカラーリングに驚かされます。


グリコ・キティランド(岡本舞子/1985)

 個人的にはいろんな意味で彼女を「特別扱い」してしまう、という変な病を自覚しておりますが(笑)、85年にビクターが送り出した期待の大型新人、岡本舞子が出演したCM。曲は後に「恋にエトセトラ」と改作されてアルバムに収録されましたが、そちらよりもやはり「恋はパウパウ」という奇妙で奇怪なタイトルのほうが馴染み深いかと思われます。


グリコ・アーモンドチョコレート(南野陽子・岩城憲/1987)

 復活した共演シリーズ、87年のCMはナンノと岩城憲。曲は松崎しげる「君がいればそれでいい」。熱烈な「おニャン子」マニアであれば、この出演男性を覚えておられる方もいるかも。「夕やけニャンニャン」で結成された男性アイドル・グループ「息っ子クラブ」のメンバーで、後にソロ・シンガーとしてもデビューした彼。現在は音楽プロデューサーをされているのだそうです。


グリコ・カリフォルニアバー(吉川晃司/1985)

 おまけ動画。パステルのスーツを着たニコリともしない無愛想なアイドルが西海岸の路上でただジャンピング2段回し蹴りをする、というだけのものですが、彼がいまだにステージ上でこのキックを披露するということをかんがえても、やはりこのCMのインパクトは絶大でした。そういえばつい最近もこのシンガーは森永のTVCFで「バニラモナカジャーンボ!」と絶唱して小さな子供を恫喝してますね。相変わらず、最高です。

*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。




 先日、俳優の岩城滉一さんが、家族の大反対を押し切って宇宙旅行への正式な申し込みをした、というニュースが大きな話題となりました。その旅行自体は、ロケットで大気圏外に出て無重力空間をほんの2〜4分ほど滑空する、というものですが、その旅費(日本円で900万ほど)はともかく、世の中で「男性」と分類される人の中にはこの計画に反対を表明する人はいないと思われます。さてさてそんなワケで今回の特集は「宇宙空間」です。宇宙ヤバイ、マジヤバイ。(2013年7月26日更新分/選・文=大久)


Chris Hadfield sings Space Oddity (2013)

 実は最近、岩城氏のニュースよりも大々的に世界中の新聞紙上を賑わせたのはこちらの動画でした。本物の宇宙飛行士クリス・ハドフィールド氏は、カナダで知らない人はいないと言われる程有名人ですが、彼はいつもオチャメな宇宙実験を報告することで大人気(「宇宙でゲロを吐くときはこうしろ」といったような素敵な実験動画を多数アップしています)。その彼の最新動画は、リアルな宇宙飛行士が宇宙空間でリアルに「SPACE ODDITY」を歌う、という、なんとも感動的なものでした。

David Bowie / Space Oddity (1969)

 知らない方のために、一応オリジナルの動画も貼っておきます。1960年代、スペース・ディケイドに世界が沸き立つ、そんな時代ではありましたが、まだ人類が月に降り立つ直前に制作されたこの歌は、宇宙飛行士が宇宙に出たら、あまりの宇宙の美しさに我を忘れて船を飛び出してしまう、という曲。1969年7月20日、アポロ11号が地球を飛び立つ映像が衛星生中継された際に、イギリスの生放送特番でBGMとして流された曲でもあります。それにしても低予算で作られたこのビデオ、ツッコミ所満載ですよね。


First Moon Landing 1969

 さて、昨今では「本当はアポロは月に行ってない」などと不埒な虚言を口にする輩が出てきて困ったものですね。こちらの動画は69年7月20日、人類が初めて月に降り立った際の実際の映像です。YOUTUBEというメディアの面白いところは、訳知り顔で「こんなの大嘘だ」と口を尖らせコメントを残す輩に、逐一「お前の疑問に全部答えてやるぜ」といってその不埒な輩を完膚なきまでに論破する親切な人がちゃんと存在することでしょう。



Pepsiman Commercial Space Tours (1998)

 ちなみに今から15年も前、ペプシコーラが「宇宙旅行」を優待するという懸賞キャンペーンを実際にやりました。旅行の内容は、概ね今回の岩城滉一氏のものと類似していますが、ペプシのキャンペーンは「2001年宇宙への旅」とネーミングされ、実際に5名の当選者がいたものの、無期延期となり現在も実現されていません。たしか当時「懸賞の上限金額」である1000万円が慰謝料的に当選者に渡され、キャンペーンはなかったことに、と報じられたと記憶していますが。このキャンペーン、当方はよーく覚えています。なぜなら、当方も実際に応募を検討したひとりだからです。


Kylie Minogue / Put Yourself In My Place (1994)

 最後はオマケ動画。ある意味これ以上はないというエロエロなタイトル(大昔からソウル・ミュージックの世界では良く使われる言葉ではありますが)を持った、カイリー・ミノーグの94年のシングル曲のPVです。既にお気付きの方も多いと思われますが、このPVは1968年のスペース・アドヴェンチャー映画『バーバレラ』(監督はロジェ・ヴァディム)の冒頭部分で、主役のジェーン・フォンダが披露したストリップティーズのシーンを丸々引用したものです。



*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。