2014年10月17日(金)

買いもの日記[2]


 最近、レコード以外で何を集めているのか聞かれる機会が多くなった。やはり昔のものが好きなので触り心地がいいものは何でも買ってしまう。
  前にどこかで書いたけど、とにかく重いものは高級なモノ、という感覚がある。薄い木よりも厚みのある木、鉄の方が触り心地がいい。スピーカーなら、サンスイのSP50、SP30、ダイナコのA25Xが4つ、テレフンケンの壁掛けのス

ピーカー、薄型の軍用スピーカー、ステフェンス・トゥルーソニックのモノラルスピーカーに小型のステレオスピーカー、どれも今でも素晴らしい音が出る。音の出る家具のようで可愛くて仕方がない。レコード周りの機材はもちろん、他にも、眼鏡、カタカナ表記のタイプライター、陶器、イス、古本、万年筆、パイプ。ただ、レコードと違ってかさばるものが多いのでひたすら買うことはできない。

本当に買い物に行ったときの出会いで、欲しいと思ったものを驚くような安値で買って帰る。買い物が好きになったのは小学6年生のときからだからもう治らない。小学6年生にしては多い月三千円のお小遣いは全部、古着屋で、自分の服を買っていた。国分寺の朝日屋にはよく通った。そして青梅の方にある中学、高校に入学すると福生の古着屋、中神のクジラロードにある古着屋に通うようになる。そのまま大学に入ってもとくに何も変わらなかった。近所のリサイクルショップや古本屋、古着屋を探し、週末になると神保町や下北沢、中央線沿線へ出かける。いつも一人だったからか、ガラクタのようなものばかり買って、家ではよくわからない古い音楽ばかり聴いている。周りの人が心配し始めたのだ。誰か乗り移っ

たんじゃないか。とか、真面目な顔で精神病院を勧めた人もいた。でもぼくには憧れの古い時代を知る一番の勉強方法だった。買ったものはどれも刺激的なものばかり。今でも大事にしている。
 買い物はやめられない。けど、お金が山ほどあるわけではない。どこかを削って、買うときにはこれで今後大丈夫か、考える。買うかどうか迷うものなんて買

わない。それでもモノは増えていく。そうやって増えたモノだからどれも愛着がある。使い捨てのモノには愛着が持てない。使わないけど欲しくなるものもある。ビンテージの杖、ランプの付かないランプシェード、鏡のない鏡台がそれだった。
 というわけで、この買い物日記は毎月一回、ぼくがそのとき買ったものについて書いていこうと思います。
(馬場正道=渉猟家)



居酒屋散歩《新宿・池林房》


 今回の「池林房」は古い店だ。私が最初に行ったのは30年以上前の事。場所は新宿。当時は花園神社の入り口のすぐわきにあったのだが、後に現在の新宿三丁目に移った。都営新宿線の「三丁目駅」の最短の出口から数分の所にある。
 20代の頃、新宿は通勤の通り道にあったので、時々降りては一杯ひっかけていた。池林房は当時一緒に仕事をしたカメラマンに連れ

て行ってもらったのが最初。その後何度も通うようになって、店をはねてからゴールデン街にも梯子をするということを覚えた。
 店にはまだ有名になる前の椎名誠がきていて、後にエッセイなどで店の事を書くようになり知名度が高くなっていった。さらに新宿に姉妹店が3件もあって、そこだけで梯子をしたことがある。あるとき最後に池林房に行って飲んでいたら

頼みもしないワインが出てきた。「何?」と聞いたら、オーナーの大田さんが「うちの店を飲み歩いてくれたので、サービス」といって出してくれたこともある。
 最近は色々なところで飲むようになっているので、昔のように毎晩新宿をうろうろするということはない。また20代の頃は、若さに任せてたびたび深酒をして、時には明け方まで飲んで、新宿から出社なんてことも

あった。今では朝まで飲むことはないが、もしあったとしたら、翌日は1日布団の中で沈没状態だろう。飲んでも日の変わらないうちに帰るようにしている。
 よく通っていたころの大好きなメニューは「シメジバターのホイル焼き」。これはシメジとたっぷりのバターをアルミホイルで包んで温めたもの。アルミホイルを開けると、液状になったバターのなかでしっとり

としたシメジのいい香りがして、ビールでも酒でも、ワインでもなんでも会うつまみだった。最近はたまにしか行かないが、メニューは当時とだいぶ変わってきて、このメニューはない。最近は年のせいかあっさりしたものを好むようになってきて、最初はおすすめの刺身から始まることが多い。ワインに合うのは「トリッパトマト煮込み」と言って牛の胃袋(蜂の巣)を柔らかく煮こんだもの。これがうまい。
 入口で3段ほどの階段をおりて重い木の扉を開けると、ヒノキのカウンターが並んだ屋台風のレイアウトの店内が飛び込んでくる。中高年向きの雰囲気だと思うが、若い人でも抵抗感はないだろう。先日行ったときはこの店での待ち合わせ。来ていないので「コの字」型のカウンターの角に座っ

て、ビールとお通しと枝豆で待っていたら、1杯飲み終わったころ友人(編プロの社長をしている)がやってきた。すぐビールで乾杯。その後はハイボールやら焼酎やら飲んで最後はワインを空けた。気付いたらお店は満席。パスタでも〆に頼んで終わりのしようかと思ったのだが、友人がもう1軒というので、店を出た。ちなみにこの店の看板は午前2時、木、金、土は午後5時。
 ほろ酔い気分で店を出て末広亭のそばを通り、靖国通りを渡って花園神社に入り小さなお願いをしてお賽銭をあげて、階段を下りると目の前が交番。その隣からゴールデン街が始まる。昔みたいにはゆかないが友人と2軒ほど梯子をして、その日のうちに帰宅した。
(川村寛=小学館クリエイティブ)



演奏者推測のススメ 5


 前回は、先ほどリリースされたキングレコード「ラヴ・サウンズ・スタイル」をテキストに推測していきましたが、今回はそのシリーズの前身となる「ラヴ・サウンズ・スタイル」シリーズから推測していきましょう。「ラヴ・サウンズ・スタイル」シリーズは、2004年に東芝EMI(現ユニバーサルミュージック)

やコロムビアミュージックエンタテインメント(現日本コロムビア)などレコード会社5社から計6枚リリースされたコンピレーションです。
 まずは、シリーズに先駆けて東芝EMIからリリースされたコンピレーション『ラヴ・サウンズ・スタイル』。イージーリスニングらしからぬスウィンギーな

演奏を繰り出すモダン・クラッシクス・アンサンブルは、編曲を前田憲男が手がけていることから、ドラムスは彼のファースト・コール・ミュージシャンの一人の猪俣猛ではないかと推測されます。ウッド・ベースは鈴木淳か荒生美智弘と推測しましたがいかがでしょう。山下毅雄「モア」では、江藤勲の個性的なトーンのベースを聴くことができます。のちに、江藤氏は山下氏作曲の「ルパン三世」の劇伴のセッションにも参加しており、チャーリー・コーセイ「ルパン三世主題歌2」などでプレイしています。
 シリーズ中の東芝EMI編のゴールデン・サウンズやジミー竹内とリズム・フォーでも江藤氏のトーンを聴くことが出来ます。ジミー竹内とリズム・フォーでのフルートは、ゴールデン

・サウンズの衛藤幸雄でしょう。衛藤氏も多くの劇伴に参加しています。中でも、「サザエさん一家」(サザエさん)や、「キャンディ・キャンディ」(キャンディ・キャンディ)などは、40代以上の人ならまず聴いたことがあるのでは。「サザエさん一家」ではベースも江藤氏が担当しています。スクリーン・サウンド・オ

ーケストラの演奏は極端です。「裸足で散歩」では6/8拍子の完全ジャズ・スタイルの演奏、「さよならコロンバス」では細かなスネアが特長な8ビート。ジャズとポップス(ソウル)の両方のスタイルを持ち合わせているという点では、ジミー竹内によるセッションの可能性が高いと思われれますが断定は難しいです

ね。川口真「ザ・ウインドミルズ・オブ・ユア・マインド」は、とてもカッコイイ演奏なのですが推測は難しいです。70年代後半になると候補プレイヤーの数が多くなってしまい、なかなか絞りきることが困難になってきます。
 今回は東芝EMI音源のみの紹介となってしまいました。他社メーカーは次回に。
(ガモウユウイチ=音楽ライター/ベーシスト)
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ラブ・サウンズ・スタイル・シリーズ〜70年代に国内制作されたイージーリスニング・アルバムの中から、カフェ・ミュージック/ラウンジ・ミュージックとして再評価される作品を収録。美しいメロディを口笛やスキャットで楽しめる。ラブ・サウンズ・スタイル読本(濱田高志・著)もあり。




企画展『ジャック・ドゥミ映画/音楽の魅惑』

会場:東京国立近代美術館フィルムセンター展示室(企画展)
会期:2014年8月28日(木)〜12月14日(日)
詳細⇒http://www.momat.go.jp/FC/demy/index.html

【作曲家ミシェル・ルグランとジャック・ドゥミ】
日程:2014年10月25日(土)
時間:3:00pm〜
場所:展示室ロビー(7階)
講師:濱田高志(音楽ライター、アンソロジスト)



高岡まつり2014秋 〜宝の島の歌姫たち〜

日時:2014年10月23日(木)OPEN: 19:00/START:19:30
会場:渋谷TSUTAYA O-nest/料金:前売2500円/当日3000円
出演:Charisma.com/水曜日のカンパネラ/おおたえみり
チケット:イープラス、ぴあ、ローソン、O-nest店頭 お問い合わせ:O-nest(03-3462-4420)