てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年9月26日〜10月10日分)

 消滅した古い文化を保存、とかそういう御大層なことは一切考えず、「うわっ昔ってこんなだったっけ?んーでも確かにそうだったよなあ」という記憶の補完のためだけにやります。TV-CM動画特集。今回はカセットテープのCM集です。カセットテープが一般に普及したのは1970年代の末。以降15年程は「音楽」を語る上で不可欠のブツでした。でも「音(音質)がどうたらこうたら」というキャッチコピーがもの凄い抽象的表現なのは今も昔も変わんないモノなんですね(笑)。(2014年9月26日更新分/選・文=大久)


TDK-AD TVCF (Stevie Wonder / 1980)

 70年代末からTDKのカセットのCMにスティーヴィー・ワンダーが出演しているのをご記憶の方は多いと思われます。1981年、スティーヴィーは2度目の来日公演を行なっていますが、同公演はTDKの1社提供でTV放送されました。当方もよく覚えています。もうね、放送中ウンザリするほどCMで「Do I Do」を聴かされましたから(笑)。音の説明はともかく、この英語のコピー文なんとかならなかったんでしょうか。

SONY HF-X TV-CF (Shandi Sinnamon / 1985)

 1985年のソニーのカセットのTV-CM。歌ってるのはシャンディー・シナモンという女性で曲名は「MAKING IT」です。ここで「アレ?」と思った方。鋭いです。ええ、どう聴いてもあの曲にそっくりですよね。それにあの曲と同じキャッチコピーが映像中に出てきますし。シャンディー・シナモンは映画『フラッシュダンス』(84年)のサントラにも曲を提供。95年には英語版『セーラームーン』にも楽曲提供した女性です。
SONY HF-X TV-CF (Teri Desario / 1985)

 そして同じく85年のソニーのCM。こちらのCMが大量オンエア&曲が大ヒットした事でご記憶の方が多いと思われます。実は前述シャンディー・シナモンもこちらも作曲者は同じくリチャード・ジトー。テリー・デサリオは80年に(KC&ザ・サンシャイン・バンドの)KCとのデュエット曲(バーバラ・メイソンのカヴァー)がヒットしたことで知られる女性。
MAXELL UD2 TV-CF (Wham! / 1983~)

 マクセルは多くの洋楽アーティストを起用したCMを制作してましたね。まずはこちら。ワム!が連チャンで起用されていた時のもの。最初の方の映像で「BAD BOYS」の別テイクが使用されています。有名な話ですが、これはジョージ・マイケルが日本人を馬鹿にした内容の歌詞を新たに書き下ろしています。が、日本人スタッフにはそれに気づく人は誰もいなかった、とのこと。
MAXELL XL1 TV-CF (Al Di Meola / 1987)

 マクセルはトンプソン・ツインズ、スタイル・カウンシル、キュリオシティー・キルド・ザ・キャット、ナイル・ロジャース等もCMに起用していますが、音楽メディアがデジタルへと移行する最中の87年、このCMにはアル・ディメオラ先生が出演しています。この後、少しずつ頭部が寂しくなっていきますが、ある時期を境にまた黒々と進化していくというディメオラ先生。お茶目です(笑)。


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 今回も「カセットテープTV-CM」の続きです。前回はあえて洋楽アーティストが日本のCMに出たものばかりを集めましたが、今回は邦楽アーティストにしてみました。もちろんこの場合は膨大なCMが制作されているので当欄でそれらを網羅するなんて無理ですが(今から10年前、2000年頃までテープのTV-CMありましたもんね)、ここでは「アレッそういえばこんなのもあったなあ」的なものに絞って集めてみました。(2014年10月3日更新分/選・文=大久)


Fuji Film TV-CM (YMO / 1980)

 YMOがフジフィルムのカセットのCMに出演したのは1980年。曲は代表曲「ライディーン」ですが、このCMは他のパターンも制作されていて、もうひとつのバージョンでは「開け心-磁性紀-」を使ったものもあります。それにしても、メタルテープ! いやあ「メタル」っていうだけで超高級感を感じてビビってしまう当方はやっぱり一生貧乏人です(笑)。
Sony BHF TV-CM (The Hospital / Susan / 1980)

 ホスピタル、それからスーザンという正体不明の外国人アーティストが出演するソニーのカセットCM。既にご承知の方も多いと思いますが、前者は杉真理氏の変名プロジェクトで、80年にこの「ライヴ・カプセル」でシングルをリリースしています。後者はスーザン・ノザキさんという日本国籍をもつ女性シンガーで、高橋幸宏プロデュース、YMOの3人をはじめ立花ハジメ、久保田真琴等も参加したアルバムを当時発表しています。2005年に彼女のコンプリートCDが発売された際には話題にもなりました。

Maxell TV-CF (村田和人 / 1983)

 マクセルのカセットテープのCMは、80年に山下達郎「RIDE ON TIME」が起用されて以来、THE MODS、TMネットワーク、渡辺美里、大江千里、安室奈美恵、相川七瀬、MISIA他多くのアーティストが出演しています。で、こちらは村田和人「一本の音楽」を使用した83年のCM。出演してるのは都市探検家の松山猛氏という方で、こんなアメリカンな映像なのに載ってるバイクが英国の古めかしい骨董品のような(笑)ベロセットっていうところが面白いですね。
TDK TV-CF (小比類巻かほる / 1987)

 うーん、なんという80年代テイストでしょうか。もう泣きそうです(笑)。「HOLD ON ME」「両手いっぱいのジョニー」「シティー・ハンター~愛よ消えないで~」等のヒット曲でも知られる歌姫、小比類巻かほるさん出演のTDKのTV-CM。曲は「TOGETHER」。小比類巻さんは現在もホントに変わらぬ歌声で活躍を続けてますよね。余談ですが「何故46分というハンパな収録時間があるのか」。今はもうその理由をご存知ない方も多いんでしょうね。
小比類巻かほる / Together (1987)

 上のTDKのCMはメイキングを含めた長尺版がご本人によって公開されているのでこちらも張っておきます。で、なぜ「46分」か。昔カセットに使われるテープは3種類(それぞれ#150、#200、#300と呼ばれます)あって、後者ほど薄く、長い収録時間が可能になります。前者のほうが厚く音質面で有利でした。で、前者を使ってほぼ限界の長さの45分テープを作ったところ、多くのLPアルバムが収録できなかったので、無理矢理1分間延長して、少しでも多くのLPを録音可能にした、という理由なのだそうです。


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 ヘンテコなギター特集。今回は「ダブルネック・ギター」の特集です。ある意味ロックの代名詞的な存在とも言えるダブルネックですが、ツェッペリンやイーグルス、ウイングス(デニー・レーン)、オフコース他、多くのロック・レジェンドが手にした楽器にも関わらず、昨今はその使い手をすっかり見なくなりましたね。そんなダブルネックを実際に使っているシーンを集めてみました。(2014年10月10日更新分/選・文=大久)

Larry Collins / Hot Rod

 ダブルネックが初めて開発されたのは1958年、ギブソン社によってですが、当時それほど有名な使い手がいたワケではありません。TVパフォーマンスでダブルネックを使いこの楽器に注目を集めたのはジョー・メイフィスというカントリー・ギタリストですが、こちらはジョー・メイフィスとのコンビで売り出された天才少年カントリー・シンガー、ラリー・コリンズ。それにしても、中にオッサンが入ってんじゃねえの?ってくらい大人びてますよねえ(笑)。
Led Zeppelin / The Song Remains The Same (1973)

 ロックの世界でダブルネックを世界中に広めたのは間違いなくジミー・ペイジという人で、彼の影響力に比べたら他のギタリストは皆屁みたいなものです。近年本人の監修で「彼の所有物を完全コピー」とうたった復刻モデルがギブソン社から出ましたが、50本限定、本人のサイン入りでお値段500万円というなんともフザけた価格でした(ちなみにサインなしは120万円)。それにしてもこの動画、最強ですねえ。史上もっともオバサン臭かったペイジ先生の髪型だけが悔やまれるところです。

Raspberries / Go All The Way (1972)

 明らかにペイジに感化されて手をだしてみたと思われる1人に、ラズベリーズのギタリスト、ウォーリー・ブライソンがいます。とはいえ、彼がダブルネックで奏でる音色はHRというよりもバーズやビートルズ的なメランコリックなものでしたが。ギターもそうですけど、これでもか、とロックしまくるエリック・カルメン(VO)はカッチョイイですね。その後のバラード路線が大成功したことで、すっかりラズベリーズは「過去のもの」とされてしまいましたが。
Daft Punk / Robot Rock (2005)

 「ロックを象徴するアイコン」としてダブルネック・ギターを紹介していますが、まさにその象徴中の象徴ともいえる動画。ダフト・パンクはもちろんギターを演奏しませんが、彼らの「ROBOT ROCK」というPVにはまるで主役のようにこのダブルネック・ギターが登場します。余談ですが、この曲のほとんどの音はブレイクウォーター「RELEASE THE BEAST」(80年)のサンプル音で出来ています。
Cheap Trick / Surrender (live/1989)

 ネックを沢山つけたギターという意味では、2本のみならず、ここまでバカな例も存在します。ご存知チープ・トリックのリック・ニールセンは同曲の演奏中、一応全部のネックでギターを弾くという律儀な(笑)演奏を披露しています。実は同バンドのベース、トム・ピーターソンも結構なド変態ベーシストでして、彼はアーム付フレットレスベース&12弦ギターを組み合わせたダブルネックを使用したことがあります。何の因果かその楽器は今ウチにありますが。
Michael Angelo Batio / Double Neck Guitar Solo (2012)

 世の中には愛すべきバカとそうでないバカがいまして、上のリック・ニールセンなんかはもう世界の寵愛を一手に担う愛らしいタイプですが、こちらのマイケル・アンジェロさんはそうではないタイプです(笑)。この演奏に一体なんの意味があるのか。曲芸だというのなら街のピエロのお兄さんのほうがよほど技も優れています。つまりこの動画は「反面教師」という4文字を我々ギター弾きに教えてくれる貴重な動画なわけです。


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