てりとりぃ放送局アーカイヴ(2014年11月28日〜12月12日分)

 先日も当欄で「ジョン・ルイスのXマスCM」特集をやりましたが、今回はちょっと趣向を変えてのCM特集をやってみます。2014年、つまり今年のXマスシーズン向けに作られたスペシャルCMの特集です。ここでは割と「大作」的なCM動画をラインナップしていますが(もちろん海外でも日本でも同じような「ただ騒がしくコピー文をガナるだけのCM」も数多くあります)、いつの日か日本のTVでもこういうCMが流れるような時がくればいいんですけどねえ。(2014年11月28日更新分/選・文=大久)


Sainsbury's OFFICIAL Christmas 2014 Ad

 当欄でおなじみの「ジョン・ルイス」と並び、今年はこのセインズベリーという英大手スーパーマーケットチェーンのTVCMも大きな話題になりました(ジョン・ルイスのとどっちが素晴らしいCMか、でネット上で論争にもなったり)。サッカーもチョコも好き。ドイツ人だってイギリス人だってそれは変わりません。この話は100年前の実話に基づいて書かれた脚本であることが、メイキング動画で明らかにされていますが、実話でもフィクションでもいいんです。どっちにしろ号泣モノです。

Extended Boots Christmas TV Advert 2014

 ブーツ。イギリスのアチコチにある薬局チェーンです。日本でのマツキヨに近いかも知れませんね。必殺の家族ネタ、というワケでもうキュンキュンに胸キュンなCMとなっております。ちなみにこのホクホクさせられるBGMはアレキシ・マードックという英インディー・アコースティック・シンガーによるもので、デビュー盤に収録された「SONG DOR YOU」という曲。

Waitrose Christmas Advert 2014

 ウェイトローズは英ジョン・ルイスの傘下にある食品スーパーマーケット・チェーン。こちらのCMもホント素晴らしい脚本に感動します。まあこの黒髪ショートの女の子がメッチャ可愛いこともありますが(笑)。ところでこのBGM「TRY」ですが、「YOUR VOICE」というチャリティー企画のために録音されたもので、歌っているのは素人さんです。オリジナルはドリー・パートン
Mulberry - Win Christmas

 マジメなモノが続いたのでここらへんでオチャラケCMを。1971年創業の英アパレル・ブランド、マルベリーのXマスCM。実はクリスマス・プレゼントってのは、このCMにあるような「争い」があったりするもんですよね(笑)。子犬とか白馬とか、そんなサプライズよりも女性が我を忘れて一番喜ぶのが「赤いカバン」だったりするあたりも、現実的です(笑)。

Burberry - From London with Love

 イギリスを代表するアパレルといえばもうそれはバーバリーですよね。バーバリーが英国工場を全て閉鎖し中国工場に一本化した、というニュースは当方をとても悲しませましたが、まあそんなことはともかくキャメルカラーのタータンチェックは150年以上の歴史を誇ります。で、そのバーバリーの今年のXマスCMは、ロミオ・ベッカム君という10歳のガキンチョが主役。うわー、お父さんとお母さんにホントそっくりですねえ彼。使用されている曲はエド・ハーコートという英ピアノ弾き語り系SSWによる「THE WAY THAT I LIVE」という楽曲。


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 さて、毎年恒例企画となっておりますが、今年もクリスマス・ソング特集をやろうと思います。残念ながら選者である当方はムーディーでホンワカしたクリスマスとは無縁の人間ですので(そういえば昔、12月24日には決まってCDのマスタリング作業をやってた時期もありました。その日はスタジオがガラガラに開いてて、しかも格安だったから。笑)、今回もまたしてもオバカな曲ばかりを集めることになりました。お楽しみいただければ幸いです。(2014年12月5日更新分/選・文=大久)


Mud / Lonely This Christmas (1974)

 グラム・ロック・バンド、というよりも、コミカルなR&Rリバイバル・バンドといったほうが正確かと思われます。マッドによるクリスマス・バラード・ソング。同年全英1位を記録した大ヒット曲です。完全にエルヴィス・プレスリーの模倣に徹した1曲ですが、真面目なのにお茶目ですよね。そのオバカさ加減が最高なわけです。

Showaddywaddy / Hey Mr. Christmas (1974)

 こちらも74年に発表された、R&Rリバイバル・バンドのショワディワディーによるクリスマス・ソング。Xマス=人口的なイルミネーション、そう考えればそりゃあグラム・ロックとは最高のマッチングであることは明白ですもんね。特にこういうB級(失礼)グラムとは相性抜群。

The Wombles / Wombling merry Christmas (1975)

 以前ウィザードのロイ・ウッドをフィーチャーした「I Wish It Could Be A Wombling Merry CHristmas」(00年)をご紹介したことがありますが、そのパペット達のほう、ウォンブルズは74年にこんなXマス・ソングをヒットさせています。つまり00年の曲は、70年代の大ヒット曲2曲を無理矢理くっつけたリメイクだったわけですね。

Buster Poindexter / Zat You Santa Claus (1987)

 ご承知のとおり、元ニューヨーク・ドールズのボーカリスト、デヴィッド・ヨハンセンによる変名プロジェクト、バスター・ポインデクスターによるアルバム未収録のクリスマス・ソング。彼が40年代風のレトロ・ジャズをコミカルに再現した企画色豊かなオバカ・プロジェクトなのですが、当時これが大ヒット(NYドールズよりも!)を記録。全く人生何があるか判ったもんじゃありませんね。
The Ramones / Merry Christmas (I Don't Want To Fight Tonight) (1989)

 そしてこちらも最高の1曲。あのラモーンズによるいつも通りのラモーンズ節によるクリスマス・ソング。正直この動画のベーシストを見る度に少しがっかりする点は否めませんが(この年DDからCJにメンバー・チェンジ)、ラモーンズが最高であることは1mmも動かしようのない事実です。

Mick Hucknall / Happy This Christmas (2011)

 ここでちょっとだけ真面目な(笑)Xマス曲を。2011年に(シンプリー・レッドではなく)ミック・ハックネルのソロ名義で発表されたホンワカなクリスマス・ソング。「自分に娘ができるまで、僕はクリスマスの本当の意味を判ってなかったよ」なんていう本人のコメントも残されてますが、そんなハッピーハッピーなムード溢れる1曲となってますね。

IMALU Live Lounge / This Christmas (2013)

 最後はオマケ。ご存知明石家さんまさんの愛娘IMALUさんによる、ダニー・ハサウェイ「THIS CHRISTMAS」のマジカヴァー。いいですね。ジャクソン5のクリスマス・アルバムあたりを彷彿とさせるソウルフルな歌。うまいですよね。多分お母さん譲りなんでしょうかね。彼女、英語で歌ってたほうがスッキリしますよね。個人的感想ですが。


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 クリスマス特集。最後となる今回はバンド・エイドの特集をやります。既に各報道でも広く伝えられたように、今年あのバンド・エイドが30年振りに復活、新レコーディングによる「DO THEY KNOW IT'S CHRISTMAS?」が発表されました。そんなこともありまして、バンド・エイドの30年間をちょっと振り返ってみようと思います。(2014年12月12日更新分/選・文=大久)


Band Aid / Do They Know Its Christmas (1984)

 オリジナル。プロデュースはミッジ・ユーロ(ウルトラヴォックス)。正面からアフリカの食料問題/この年起こったエチオピア大飢饉を扱った楽曲なので、いわゆる一般的なクリスマス・ソングとはベクトルの向きが違います。ボノが歌い上げた部分は「それ(犠牲者)が君ではなく彼らだったことを今夜は神に感謝しよう」という、あまりにも逆説的なアイロニーでした。ちなみに同曲の12インチ盤をリミックスしたのはトレヴァー・ホーン。
Band Aid 2 / Do They Know It's Christmas Time (1989)

 5年後、同じ主旨で同じ曲が再録音されることになりました。ここでプロデュースを担当したのは、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのストック・エイトキン・ウォーターマン、いわゆるPWLプロダクション。参加アーティストもブロス、キャシー・デニス、ジェイソン・ドノヴァン、ジミー・サマーヴィル、リサ・スタンスフィールド、そしてバナナラマというPWL門下で固められました。

Band Aid 20 / Do They Know It's Christmas? (2004)

 オリジナルから20年を経た04年、バンド・エイド20というプロジェクトで同曲は再録音されることになりました。前年から大きくなったスーダンのダルフール紛争で40万人が(民族浄化の名のもとに)虐殺されていることへの抗議チャリティーとして発売されました。プロデュースを担当したのはレディオヘッドやトラヴィスでおなじみのナイジェル・ゴドリッチ。動画でも出てきますが、ポール・マッカートニーがベースを弾いています。
Band Aid 30 / Do They Know It's Christmas? (2014)

 そんな継続的な活動を続けるバンド・エイド基金。ことしは30年目という節目でもあり、さらにエボラ出血熱の問題が世界に広まったこともあり、今回のカヴァーは世界中で大きく報道されました。歌詞が(今向けに)書き換えられていることもそうですが、なんといっても今をときめくワン・ダイレクションが大々的にフィーチャーされていることも話題に。プロデュースは(アデルやコールドプレイでおなじみの)ポール・エプワースですが、リミックスを担当したのはアンダーワールド。
Do They Know It's Christmas Parody on 22 Minutes

 バンド・エイドへの評価はもちろん別れるところだと思います。それは30年間かわりません。ただし、問題をかなり矮小化しがちな日本のメディアとは異なり、海外ではきちんと掘り下げた評価がいろいろあります。動画はカナダCBC放送の人気番組「22ミニッツ」で放送された、物まねタレントさんによる同曲のパロディー。
Slade / Do They Know It's Christmas (1985)

 最後はオマケ。85年に「CRACKERS - THE PARTY ALBUM」というカヴァー企画盤をリリースしたスレイドが同曲をカヴァーしています。以降、パンク版とかHR版とか多くのカヴァーが生み出される状況は今も続いていますね。もちろんそれらのロイヤリティーは全額バンド・エイド基金へと収められています。


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