てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年4月3日〜2015年4月17日分)

 今回はフィリー・バラードの大定番、「LA-LA MEANS I LOVE YOU(ララは愛の言葉)」の聴き比べをやってみます。オリジナルは68年デルフォニックス。トム・ベルというライター/プロデューサーが大きく羽ばたくきっかけとなった曲でもあり、そしてもちろんフィリー・ソウルの誕生の瞬間ともいえる歴史的な録音物です。で、その名曲はその後どう歌い継がれたか。ジャクソン5、トッド・ラングレン、プリンス、ローラ・ニーロ、山下達郎等といった大定番バージョンもありますが、ここではもうちょっとマイナーなモノに目を向けてみました。(2015年4月3日更新分/選・文=大久)


The Escorts / La-La Means I Love You (1974)

 ニュージャージー・ラーウェイ刑務所の囚人が結成した、という設定(各文献にこのエピソードが必ず書かれていますが、スイマセンこれがホントかどうかは真偽不明です。獄中のデルフォニクス、というニックネームもありますが多分それは恐らく後づけかと)のエスコーツ。甘々のカヴァーをきかせてくれます。同曲を収録した2NDアルバムのタイトルは「釈放された4人が獄中に残るメンバー3人のいる刑務所に出向いて録音された」というエピソードから付けられたことになってますが、どうなんでしょうね。

The Philly Groove Orchestra / La La Means I Love You (1994)

 発表年を94年と書きましたが、これは78〜79年に録音された演奏です。オリジナルのデルフォニクスも所属したフィリー・グルーヴ・レーベルに残されたオケ音源をリミックスして制作された「カラオケ音源集」収録曲でして、よって演奏はボビー・エリ、アール・ヤング、そして御大ヴィンス・モンタナJR他サルソウル・ファミリー勢揃い。その音源をトム・モウルトンがミックスしたものです。

Tierra / La La Means I Love You (1981)

 70年代には(フィリー・インターナショナル・レーベルで)トランプス等も同曲をカヴァーしましたが、流れを重視して次はこちらをご紹介。70年代にサルソウル・レーベルから作品を発表していたラテン・ロック・グループ、ティエラが80年代に入り活動を再開した後に発表したカヴァー。同バンドの主軸、サラス兄弟は元エル・チカーノ。

Swing Out Sister / La La Means I Love You (1994)

 さて、90年代に同曲をカヴァーしたモノの中で最も有名なのはやはりこちらのスイング・アウト・シスター版かと思われます。前作でバーバラ・アクリンのカヴァーを大ヒットさせたSOSが、今度は70年代ソウルにガッツリとシフトチェンジしたことを示したこちらはレイ・ヘイデン・プロデュース。動画は東京でのライヴ音源ですが、よりニューソウル時代を色濃く意識したアレンジだとおわかりいただけるかと。
Bill Frisell / La La Means I Love You (2007)

 ジャズ・アレンジで。演奏はビル・フリーゼルです。ここで注目なのはもちろんアレンジでして、ジャズ大定番のトリオ編成なのですが、実はフリーゼル師匠のギタープレイはジャズ・ギターの定番的なソレではなく、むしろソロギターの演奏スタイルに近いモノです。音色もかなりカッチカチなテレキャス音(しかもこれ、フロントPUは日本製のビザールものですね)でして、ディレイ演奏もオクターブ・エフェクター使用もへっちゃら。フリーゼル先生はジャズの王道とは真逆に位置する方ですから、そんな点も結構斬新に聴こえるかと。
桑名晴子 / La La Means I Love You (2011)

 最後もライヴ動画、しかもこちらはオーディエンス収録なので恐縮ですが、桑名晴子さんの弾き語り演奏です。素晴らしいのは歌唱力だけでなく、日本語の歌詞にもご注目いただきたいなと。シティーポップの名盤『MOONLIGHT ISLAND』にも素晴らしいカバー曲が沢山収録されてますが、個人的には是非ソウル・カヴァー作品を期待したいところですね。


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 クラシック音楽のメロディーをロック音楽にブッ込んでみた特集、というのを随分昔にやったことがありました。今回も似たような特集ですが、もっとダイレクトなカンジです。コンサートのイントロや客出しでクラシックのシンフォニーがBGMとして使われる機会は結構あったりしますが、そんな「効果音的クラシック」を集めてみました。えっと、今回ややパンク色強め、また一部ロックのライヴと関係ない記述もありますが、ご容赦下さい。(2015年4月10日更新分/選・文=大久)



The Smiths / Dance Of The Knights (1986)

 ザ・スミスのライヴEDではシャーリー・バッシー「YOU'LL NEVER WALK ALONE」が流れてた、と以前書いたことがありますが、彼らのライヴのイントロダクションではプロコフィエフ「ロミオとジュリエット」の「騎士たちの踊り」が流れていました。ライヴ盤『RANK』でもチラっと収録されているので確認できますが、こちらの動画は別の日のライヴでのフルOPバージョン。まさに荘厳。同曲はもちろんシャネルのTVCM(90年)やソフトバンクモバイルのTVCM(06年)で使われてたので最近の方にもお馴染みかと。

Sex Pistols / There'll Always Be An England (2007)

 クラシック楽曲ではありませんが、1939年ロス・パーカー&ヒューイー・チャールズというコンビで作曲された、イギリスで最も有名な愛国歌です。で、2007年に2度目の「金儲けツアー」に出たセックス・ピストルズが同曲をイントロに採用、曲名をそのままツアー名のタイトルに用いています。いやーしかしブリクストン・アカデミーてのた美しい建物ですね。そしてこの会場には本当に愛すべきバカが集まってます。共に素晴らしい。
COBRA / Pomp & Circumstance〜Tokio Riot (2001)

 そんな流れでパンクものをいくつか。90年代初頭にはバンドブームに乗り武道館公演も成功させた大阪Oiパンクの雄コブラ。2001年にトリオで復活した時のライヴ映像ですが、イントロに使われた音楽はこちらも英国愛国歌としてお馴染みのエルガー「威風堂々」。「時計仕掛けのオレンジ」とか、ランディー・サヴェージ(WWEのスター)を思いつく方もいるんじゃないかと。当方の場合はこの曲と言えば「ジギー・スターダスト」なんですが。
SA / DELIGHT (2012)

 こちらはOP曲やED曲ではなく完全なカヴァーです。上記コブラ(トリオ編成)から脱退したギターのNAOKIが参加したSA(SAMURAI ATTACK)の代表曲ともなったこちらの「DELIGHT」は、もう一聴しただけでお分かりの通り、J.S.バッハ「ラヴァーズ・コンチェルト」のカヴァー。さすがにSAを聞いて薬師丸ひろ子(89年に「ラヴァーズ〜」を日本語でカヴァー)を思い出す人はいないでしょうね(笑)。余談ですが、セディショナリーズ愛好家の(でも高いから買えない)身としてはこのTシャツがすげー気になります。
LAUGHIN' NOSE / PARADISE (SE / 1986)

 先日ラフィン・ノーズのCHARMY氏にロング・インタビューをしたのですが、その際にも話題に出た「PARADISE SE」。ラフィンのライヴ導入部で流れる(シンセサイザーによる)シンフォニーSEですが、彼らのメジャー・デビュー盤をプロデュースした笹路正徳(元マライア/その後ブルハ、プリプリ、ユニコーン、パフィー他多くのプロデュースを担当)氏による作・演奏曲。CHARMYいわく「これ、大発明だよね」。完全に同意します。
COMPLEX / Ride Of The Valkyries〜BE MY BABY (2011)

 最後はこちら。2晩で9万人を集め7億円を稼ぎ、全額を東日本の被災地に寄付したコンプレックス2011年復活ライヴ。ステージは21年前の解散ライヴと同じセトリですが、この日イントロSEに流れたのが「ワルキューレの騎行」。このライヴの事を喋り出すと長くなるのでやめますが、もちろん「ワルキューレ」といえばテロリスト時代の藤原良明をヌキに語れません(笑)。



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 春ですね。春なのに、溜息またひとつ〜、とシンミリするのが正しい日本人の情緒というものかもしれません。が、当方の場合もうちょっとバカっぽくウキウキWAKE ME UPしてしまう季節でもあります。で、今回はデヴィッド・ボウイ「BOYS KEEP SWINGING」という曲のカヴァー聴き比べです。何故春だとこの曲なのか?にあまり意味はありません。実は先日「春っぽい曲といえば?」という問を出されて当方の出した答えがこの曲だったから、なのですが。(2015年4月17日更新分/選・文=大久)



Associates / Boys Keep Swinging (1979)

 アソシエイツのデビュー盤は、79年に自主制作盤として500枚のみプレスされたこの曲でした。しかもボウイのパブリッシャーに無断でカヴァーしたという(笑)。ビリー・マッケンジー22歳、いいですね、やることがヤンチャです。ポストパンク独特のチープな音もウキウキしますね。
Susanna Hoffs / Boys Keep Swinging (1991)

 バングルスのスザンナ・ホフス、彼女のソロ・デビュー盤に収録されたカヴァーで、同曲の一説がそのままアルバム・タイトルに引用されてます。ソロ・デビューですから大々的に売り出しが計られたのですが、ギターがラスティー・アンダーソン(現マッカートニー・バンド)、ベースがジョン・エントウィッスル(ザ・フー)とランディー・ジャクソン(ジャクソンズ)、ドラムがジム・ケルトナー、なのにこの超ニューウェイヴ色(笑)という面白い作品です。

Lorette Velvette / Boys Keep Swinging (1997)

 タヴ・ファルコというクリエイターをご存知の方はかなりの洋楽通だと存じますが、彼に見いだされてデビューの道を開いたのがロレット・ヴェルヴェット嬢。彼女の3作目に当たる97年のアルバム『LOST PART OF ME』はT-REX「20TH CENTURY BOY」やストゥージズ「DIRT」に加えこの曲のカヴァーも収録されてました。オルタナ、ですねえ。。
Sarah Harding / Boys Keep Swinging (2009)

 イギリスの人気学園コメディー映画に「聖トリニアンズ女学院 /St Trinian's」というのがあり、その「2」のサントラ収録曲、歌うのはサラ・ハーディング。彼女は元々バンド(ガールズ・アラウド)出身の歌手ですが、この時期はバンドも解散し、女優として前述の映画にも出演。ちなみにこの「2」は日本でもDVD化されていて「聖トリニアンズ女学院 史上最強!?不良女子校生の華麗なる強奪作戦」という邦題が付いています。
Hirsute Pursuit / Boys Keep Swinging (2012)

 2012年にこんなガッチガチのオールドファッションなボディービートを披露してくれるだけで嬉しくなるものですが(笑)、現代インダストリアル界の人気ユニット、ハースート・パースイートによるカヴァー。実は(曲はともかく)ジャケとかアー写からもうヤバヤバにヤバい空気を出しまくる方達でして、おそらく日本でウケることはないだろうな、と容易に推測されるグループです。

さて、実は今回の聴き比べではデヴィッド・ボウイによるオリジナル版を紹介していませんが、そちらは来週別のネタとして紹介する予定でおりますので、お楽しみに。


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