てりとりぃ放送局アーカイヴ(2015年6月5日〜2015年6月19日分)

 当欄ではカヴァー曲を取り扱うことが結構多いんですが、まあなんでもかんでもカヴァーすりゃいいってモンじゃないことは皆さんにもご同意いただけるかと思います。ただカヴァーするとかなら誰でもできます。猿でもできます。カラオケじゃねえんだからオイ、なんてグチが口から出そうになるカヴァーに出くわすことも多い昨今ですが、今回は「えっ!」「こうきたか!」と目を丸くせずにはいられない、いわゆる「ドビックリなカヴァー」を集めてみました。(2015年6月5日更新分/選・文=大久)



Green Jellÿ feat. Hulk Hogan / I'm The Leader Of The Gang (1993)

 おそらく現時点でアメリカのプロレス史上最も大きな成功を収めたひとり、ハルク・ホーガン。日本でのキャリアもお馴染みかと思いますが、その後ここまで大スターになるとは誰が想像したでしょうか。そんなホーガンが(WWFからWCW移籍の端境期にあたる)93年に突如リリースしたシングル。なんとゲイリー・グリッターのカヴァーという驚愕の選曲。

FLIP FLAP / NIJI (1999)

 美少女双子として人気の女優/モデル、FLIP FLAP。個人的にはもうこのお二方といえば(FLIP FLAP主演でドラマ化された)安野モヨコ作『JELLY IN THE MERRY GOROUND』抜きでは語れない、というカンジですが、それはともかく99年発表のこの曲はもちろん、あの電気グルーヴ至高の名曲を大胆カヴァー。以前一度だけ彼女達が撮影中の場所にお邪魔する機会があったのですが、ええ、もうホントに「オ人形サン」でしたね。凄かったです。


David Bowie / Love Missile F1-11 (2003)

 またかよ、と思われてもコリずにやります。デヴィッド・ボウイです。2003年、彼が病気で入院し、以降10年にわたってヒキコモリになるその直前に発表したアルバム『REALITY』のアウトテイクとしてこんなカヴァーが残されています。なんとジグジグ・スパトニックの代表曲をカヴァーするという無鉄砲な企画です。うーん、まあオクラ入りして正解でしょうね。

Yasumi Miyazawa / It's No Game (2013)

 さて今度はボウイ楽曲のカヴァーです。宮澤やすみさん、という三味線奏者の方はいつもトンデモナイ選曲のカヴァー曲をいくつもご自身でYOUTUBEにアップされていますが、その中でも驚愕の、というかここまでやるか!スゲエ!と思わせた1曲をご紹介。彼は他にもサバス「IRON MAN」とかクラフトワーク「MAN MACHINE」、ZEP「BLACK DOG」、ユーリズミックス「SWEET DREAMS」なんていうカヴァーもアップしています。

Lorde / Everybody Wants To Rule The World (2013)

 最後は映画『ハンガーゲーム2』のサントラ挿入歌。ドロドロとしたダーク&ヘヴィーな楽曲ですが、もちろんあのティアーズ・フォー・フィアーズの名曲カヴァーだとお気づきいただけるかと思います。その曲調にもドビックリですが、これを歌うロード(LORDE)嬢は、なんと当時17歳。末恐ろしい女性ですね。このカヴァーに深くハマったリスナーも多いようで、2分半しかないこの曲を延々と1時間ループさせた編集動画もYOUTUBEにアップされています。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。




 左のバナーも今回だけは特別仕様です。今回の放送曲は「町あかり特集」。町あかりさんはYOUTUBEに公式チャンネルを持っており、本人のMCによるラジオ番組という体で弾き語りライヴを含む動画を定期的に公開しています。番組名も「町あかり放送局」という、これまたドンズバなやつでして(笑)。この機会に彼女の名を知った方はこんな切り口もお試しいただけたらな、と思いまして、ここでは彼女のオリジナルではなくカヴァーばかりを選んであります。なのでここでは(彼女の持ち味でもあるあのチープ&ドープな路線ではない)ギター片手にしっとり目、な町あかりさんをお楽しみ下さい。(2015年6月12日更新分/選・文=大久)



町あかり放送局 #02:あおい輝彦「あなただけを」

 いきなり男歌です。ジャニーズ出身のあおい輝彦の「あなただけを」はGAROの大野真澄が作詞を、猫 の常富喜雄が作曲を担当した76年の大ヒット曲ですが、すげえとこツイてきますよねえ(笑)。ちなみにオリジナルのほうのアレンジはステージ101〜ブラウンライスで知られる惣領泰則。おそらくナイロン弦の張ってあるギターなのでしょうか。ちょっとハワイアンなニュアンスもありますよね。

町あかり放送局 #04:稲垣潤一「夏のクラクション」

 筒美京平センセを敬愛してる、と公言する町あかりさんなので納得の選曲ではありますが、オリジナル(83年・アレンジは井上鑑)は昭和歌謡というよりは80'Sメロウグルーヴ、ですよね。いわゆる昭和歌謡飲み屋でかかるようなベタベタなものばかりでなく、こういう選曲をしてくれるあたりも個人的には嬉しいスね。


町あかり放送局 #06:香坂みゆき「ニュアンスしましょ」

 そんなワケでこちらも選者の好みを反映したセレクト(笑)。作詞・大貫妙子、作曲・EPO、香坂みゆき本人が「私の曲で唯一売れた曲」と語る「ニュアンスしましょ」。いわゆる中国音階を生かしたイントロも素晴らしい曲ですが、これが「85年の資生堂キャンペーンソングだ」という紹介をする本人も恐ろしいですね。

町あかり放送局 #18:甲斐バンド「安奈」

 こういうのはフフフンと笑えばいいのです。マジになったら負けです。とはいえカヴァー演奏のほうはマジですが(笑)。ね、K口さんが彼女にメロメロになるのは、K口さんをご存知の方なら誰でも理解できますよね。余談ですが甲斐バンド「安奈」のギターがハマショーだった、なんていうウンチクをつい先ほど知りました。

町あかり放送局 #26:高田みづえ「硝子坂」

 そういえば町あかりさん本人が「スティール弦よりナイロン弦の響きがすき」と語っているのを読んだことがあります。いつかどこかでその詳細をお聞きしてみようと思ってたのですが、そんなことより「硝子坂」。作曲は宇崎竜童でオリジナルが高田みづえという、M飼野さんを胸騒ぎさせるに十分なネタですね(笑)。

町あかり放送局 #35桜田淳子「ひとり歩き」

 最後は桜田純子のカヴァー。作詞・阿久悠、作曲&編曲・筒美京平というコンビの曲ですが、オリジナルはブラスロック風味のド派手アレンジ。こちらは主メロを生かしたアコギ弾き語り。楽曲の再発見という意味でとてもタメになりますね。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。




 何回目かのギター特集。今回は王道です。エレキギターがアメリカ文化を代表するアイテムとなったのは、ギブソン社でもフェンダー社でもなく、やはりグレッチという会社によるところが大きいのです。で今回がそのグレッチ社が発売したギンギンギラギラなギター「シルバージェット」の特集。まあ面倒くさいウンチクはすべて無視して構いませんので、ここは素敵な音と素敵なルックスをお楽しみいただければ幸いです。(2015年6月19日更新分/選・文=大久)


1955 Gretsch 6129 Silver Jet

 グレッチ社が初の本格的エレキギターを発表したのは1954年。翌55年にはボディーの前面をギンギラに光るスパークリングシルバーで覆った「シルバージェット」が発売されました。こちらの画像はその55年製シルバージェットを試奏する動画。実は米ビンテージ楽器屋の店員さんによるデモ演奏なのですが、この人大バカで最高ですよね。彼は店員さんをしつつも自分のバンドで演奏もするギタリスト。YOUTUBE動画がすっかり有名になり、今ではボンジョビのサポート・ギタリストを務めてもいます。
X / The New World (1983)

 グレッチのギターは50年代から現在に至るまでカントリー〜ロカビリー系のギタリスト御用達アイテムですが、70年代以降はそのオールドファッションさが敬遠されシーンから忘れられています。そんな中80年に米で大人気となったLA出身のバンドX(註:あのXジャパンが米デビューに際してバンド名を改めたのはこのバンドがいたから)のギタリスト、ビリー・ズーム氏は頑にシルバージェットを愛機として使用した数少ない例の1人です。

Boy George / Funtime (1995)

 さて、何よりもこのド派手なギターのルックス。これは元々ドラムメーカーだったグレッチ社が「ドラムに使うあの装飾板、ギターにも張っちゃおうぜ」というアイデアから生まれたものです。馬鹿ですね。最高ですね。こちらの動画は95年にボーイ・ジョージが発表したイギー・ポップのカヴァー曲。まるでイレイジャーかよと思うようなフューチャー・サイコでグロな映像(歯医者が苦手な人は閲覧注意)ですが、ここでギラギラと怪しげに光るギターもやはりグレッチのシルバージェットでした。
KOJI1200 / ナウロマンティック (1995)

 実は上のボーイ・ジョージの曲が発表された数ヶ月後、日本でもKOJI1200というユニットがPVにてグレッチのシルバージェットを用いています。ニューロマ期のロック・サウンドを復活させたこのユニット、もちろんPVはアテフリですが、ここでグレッチを用いた元ネタは上のボーイ・ジョージ「FUNTIME」だったんじゃないかと個人的に睨んでいます。
The Willard / URUWASHI NO BABY (2007)

 ザ・ウィラード。日本を代表するパンクバンドで、25年以上歩みを止めずに活動を続けているのはご承知のとおり。JUN氏の愛機はこのシルバージェットで、56年製のビンテージ。とても深い思い入れと愛着を持ってこれを所持している、とご本人が語っていますが、演奏する姿を見るのはなかなか機会がありません。今はKLAN氏(B)も大島氏(DR)もバンドを離れましたが、JUN氏は先頃キャリア初のソロアルバムを完成させたばかり。


*動画のリンク切れの場合はご容赦ください。