2016年4月1日(金)

 
宇野亞喜良トーク&ライヴ・ドローイング


 お茶の水のブックカフェ「エスパスビブリオ」と「月刊てりとりぃ」との共同企画として、宇野亞喜良さんのトーク&ライヴ・ドローイングが去る3月26日に開催された。宇野さんとは仕事を通じて20年来のお

付き合いがあり、「てりとりぃ」の同人仲間でもある吉田宏子さん(888ブックス)が聞き手を務めたことで、宇野さんも終始笑顔が絶えず、リラックスした雰囲気の中での楽しい催しとなった。

 まずは、前回同所で行われた「浦嶼子伝」(愛育社刊)の出版記念トークショーの際に披露された、アトリエでのドローイング風景を収めた映像を再び上映。短時間でみるみるうちに仕上げられてゆく滑らかな鉛

筆のはこびは何度見ても飽きない。
 今回はライヴ・ドローイングのイヴェントということもあって、画材や絵の描きかたについてのトークが繰り広げられ、当日の朝に描き上げられたばかりの作

品をいち早くこっそり紹介。これはその場に居合わせたお客さんだけの役得であった。
 アトリエの写真が紹介される中、そこに写っていた立体作品を購入されたというお客さんがたまたま最前列に座っており、その写真を見ながら、「私が買ったものには(人形の側面に)絵は描かれていなかったんです」「じゃあ、この後で上から塗っちゃったんですね」という興味深いやりとりが、ステージと客席の間で交わされたのは面白かった。
 そしていよいよメインのライヴ・ドローイングが始まった。観客から宇野さんへモチーフのリクエストがよせられる。「蝸牛」「狐」「お化け」「ユニコーン」「籠に入った青い鳥」「フィルム」「兎」「蛙」「猫」といった声が集まり、最初

から決まっていたメイン・モチーフの少女像の周りにそれらが次々と描かれてゆく。
 途中で質疑応答もあり、最終的には40分ほどの時間を要して仕上げられた。その後サイン会も行われ、貴重な場に立ち会えた観客たちは皆満足げに会場をあとにしていった。 
 齢80を超えられて、ますます創作意欲の盛んな宇野さんは、今年もいくつかの作品集や絵本の刊行が控えているそう。もちろん「月刊てりとりぃ」でも好評連載中だ。
 今回都合が合わなかった方も、遠からずまた訪れるであろう今後の機会に、ぜひ宇野さんの気さくなお人柄に触れていただきたいと思う。 
(鈴木啓之=アーカイヴァー)



主題歌分析クラブ 08『なぞの転校生』


75年に放送された眉村卓の原作によるNHK「少年ドラマ」シリーズのSFドラマ。14年にもリメイクされているが、本項は75年版のオープニング・テーマを考察する。
 音楽は純音楽(クラシック)の作曲家、池辺晋一郎が担当。イントロは「Cm」をベースに、「6th」と「9th」をテンションにした「Cm6(9)」という、当時ではかなりモダンな響きのコード進行。当時の歌謡曲やニューミュージ

ックでは、テンションと言ってもせいぜい「7th」くらいだったので、かなり斬新に感じられる。それを、イントロの頭でいきなり持ってきたから、その衝撃は相当なものだっただろう。不協音な響きを持ったメロディにより、不気味なドラマの内容を暗示させる。
 テーマの頭では、5度が「♭5th」、そして「7th」をテンションにした「Cm7(♭5)」。5度をフラットさせて減5度にしているため、不安定でミス

 テリアスなサウンドとなっている。不安定な響きを持つディミニッシュ・コードと3和音が同じであり、不安定でありながら、洗練された響きを持つ。そして、次のコードも「B7」をベースにしながら、5度を減5度にしており、不気味さが増している。そして、サブドミナント・コードにあたるコードもディミニッシュ・コードに置き換えられている。ディミニッシュ・コードは、4つの音の音程が全て短3度のコードだ。難しかったかもしれないが、要はあえて不安定な響きを感じさせるコードを多用して、主人公の不安な心情を描いている。
 最後は、最後は「F6」で終止。同主調のCメジャー・キーの「F」をモーダル・インターチェンジで借用、サブドミナントで終わったと考えられる。そのた

め、曲が未だ途中のような感じがあり、またメジャー・コードとはいえ、「6th」が入っているため、翳りを持った明るさで終わっている。
 ちなみに、原作の小説も良作なので興味ある方はご覧いただきたい。中学生、高校生時代に読めば、はまること間違い無しだ。高校生を過ぎてしまった方は、是非来世には読んでいただきたい。『週刊てりとりぃ』15年10月9日号の「私的作

家思考」にも原作本について執筆しているので、併読願いたい。
 この『なぞの転校生』のオープニング・テーマ、短いながらも音楽的に素晴らしい作品なのだが、単独ではレコード化されていない。ユーチューブにアップされている(3月現在)ので、興味のある方はこっそりお聴き願いたい。
(ガモウユウイチ=音楽ライター/ベーシスト)



「鼻トールメントール」生産中止


 巷は桜花爛漫であるが、こちらは花粉症の季節、本番でうっとうしいことこのうえない。さらにも増して、今年の花粉症は強力だ。しかも、咳がひどく出て、のどが痛くなり、挙句の果てに声が出なくなるという、なんだか風邪の症状に近いのだ。とはいえ、例年の対策として、抗アレルギー薬ジルテックを服用している。すでに15年以上経つが、自分にはこの薬が合うようだ。

毎晩一錠服用すれば、一日、アレルギーを抑えることができる、この時期の常備薬である。
 と同時に、いつもポケットに忍ばせていたのが、森永製菓「鼻トールメントール」だ。
 この一個百円ののど飴は、強烈なスーパーミントのお陰で、鼻の詰まりはおろか、鼻水も吹き飛ばしてくれる優れものだ。モンデリーズ・ジャパン「ホールズ ハ

イパーミント」なんか、てんで目じゃない。今年も、大量に買おうと思い、コンビニに行ったのだが、どこにもない。いくつか店を変えて見たが、どこのチェーン店にもないのだ。不思議に思い、ネットで検索してみると、販売終了のお知らせが。今年の3月9日に告知されていたらしいが、え~、これがないと、鼻が通らないのですよ。確かに、味は強烈に不味い。僕は長年なめているから慣れているが、初めてなめる人は、たいがい、不味くて口から出す。サロンパスをなめているようだと称する人もいるほどだ。しかし、しかしである。この時期、この飴のおかげで、快適に過ごせてきたのに、それなのにないとは、残念至極。しょうがなく、いつもは次点のカンロ「スーパーメントールのど飴」をバカ買いして、

なんとか凌いでいる。しかし、お気に入りの物が急になくなると、がっかりしますな。
 なお、同時期に終了したお菓子に 明治製菓「カルミン」がある。大正10年に製造開始というから、94年間のロングセラーという歴史的なお菓子だ。遠足のお菓子に持っていた記憶のある御仁も多いのではなかろうか。そんな歴史のある「カルミン」だが、奇しくも「鼻トールメントール」と同じ今年の3月で生産の幕を閉じた。
 人知れずひっそりと消えていくお菓子の数々。そんな感傷に浸りたい気持ちもあるが、花粉症の緩和に非常に役に立っていた「鼻トールメントール」。推定3千万人以上といわれる日本の花粉症患者のために、断固復活してもらいたい!
(星 健一=会社員)